参議院法制局

第146回国会参法第6号


消費者契約法案要綱

第一 総則

一 目的

 この法律は、消費者が事業者と対等な立場において契約を締結することができるよう、消費者契約の効力等に関し必要な事項を定め、消費者契約の締結過程及び内容の適正化を図るとともに、その実効性を確保するための措置を講ずることにより、消費者の利益を確保し、もって国民の消費生活の安定及び向上に資することを目的とするものとすること。

(第一条関係)

二 定義等

1 この法律において「消費者契約」とは、自然人が主として事業に関連しない目的で事業者と締結する契約(労働契約を除く。)をいい、「消費者」とは、この場合における自然人をいうものとすること。

2 この法律において「事業者」とは、主として事業に関連する目的で契約を締結する自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいうものとすること。

3 自然人が契約を締結する目的が主として事業に関連するかどうかについては、契約の類型、契約に係る交渉の経緯等の事情をすべて勘案したうえで、実質的に判断するものとし、内閣総理大臣はその判断の指針を定めるものとすること。

(第二条関係)

第二 消費者契約の適正化

一 消費者契約の締結過程(情報不提供等の場合における契約の取消し)

1 事業者(事業者から消費者契約の締結について消費者を勧誘するよう順次依頼を受けた者を含む。以下一において同じ。)が、消費者に対し、消費者契約の締結に際して次のいずれかに該当する行為を行った場合において、当該行為がなかったならば当該消費者が当該消費者契約を締結しなかったであろうときは、当該消費者は、当該契約を取り消すことができるものとすること。

(1) 当該消費者契約の締結に係る消費者の判断に影響を及ぼす重要な事項(以下一において「重要事項」という。)について、消費者が理解することができる程度に情報を提供しないこと。ただし、事業者が情報を提供しないことにつき正当な理由がある場合を除く。

(2) 重要事項について、不実のことを告げること。

(3)威迫すること。

(4)消費者の私生活又は業務の平穏を害し困惑させることその他消費者が合理的に判断することを妨げること。

(5) 消費者の判断力が不足している状況を濫用すること。

2 重要事項には、一般消費者の判断に影響を及ぼすと考えられる事項のほか、当該消費者の判断に影響を及ぼすことを当該事業者が知り、又は知ることができる事項を含むものとすること。

3 1の(1)の「消費者が理解することができる程度」とは、一般消費者が理解することができる程度とするものとすること。ただし、当該消費者の理解能力が著しく不足している等の事情を当該事業者が知り、又は知ることができる場合においては、当該消費者が理解することができる程度とするものとすること。

4 内閣総理大臣は、重要事項その他1に掲げる行為に係る事項について、判断の基準とするための指針を定めるものとすること。

5 1の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができないものとすること。

6 1の取消権は、当該消費者契約の締結を追認することができる時から三年間行使しないとき又は当該消費者契約の締結をした時から十年を経過したときは、時効によって消滅するものとすること。

(第三条及び第四条関係)

二 消費者契約の内容

1 契約内容の明示

事業者は、消費者契約の内容に関する書面を作成し、これを消費者に交付する等により消費者契約の内容を明示するよう努めなければならないものとすること。

(第五条関係)

2 不意打ち条項

消費者契約の契約条項のうち、当該契約の外形及び交渉の経緯からみてその内容が社会通念上異常であるためその存在を一般消費者が予測できないと考えられる条項は、無効とするものとすること。

(第六条関係)

3 契約条項の明確化等

事業者は、消費者契約の契約条項について、明確かつ平易に表現しなければならないものとすること。

(第七条関係)

4 疑義のある契約条項の解釈

消費者契約の契約条項の意味について、一般消費者の理解を基準とした客観的解釈によっても疑義が生ずる場合は、消費者にとって有利な解釈によるものとすること。

(第八条関係)

5 不当条項

(1) 消費者契約の契約条項のうち信義誠実の要請に反して消費者に不当に不利益な条項(以下「不当条項」という。)は、無効とするものとすること。

(2) 次のいずれかに該当する条項は、不当条項とするものとすること。ただし、当該条項が相当であると認められる事情があるときは、この限りでないものとすること。

イ 事業者が一方的に法律関係の設定又は変更をすることを可能とするもの

ロ 消費者に過重な義務を要求するもの

ハ 消費者の法的地位を著しく不安定にするもの

ニ 消費者の法律上認められた権利を制限するもの

ホ 消費者の権利実現の手段を制限する結果となるもの

(3) (2)の不当条項の具体的な基準については、政令で定めるものとすること。

(第九条関係)

三 民法の適用

消費者契約の締結過程及び内容の適正化については、一及び二によるほか、民法の規定によるものとすること。

(第十条関係)

第三 消費者契約の適正化の実効性の確保

一 不当条項の削除等の勧告

内閣総理大臣は、不当条項の使用により消費者の利益が著しく害され、又は害されるおそれがあると認めるときは、事業者に対し、当該不当条項の削除又は変更その他の必要な措置を講ずべきことを勧告することができ、勧告をしたときは、その旨を公表することができるものとすること。(第十一条関係)

二 内閣総理大臣に対する申出

1 何人も、消費者の利益が著しく害され、又は害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を申し出て、指針の改定、政令の改正、勧告等の必要な措置を講ずべきことを求めることができるものとすること。この申出は、都道府県知事経由で行うことができるものとすること。

2 内閣総理大臣は、1による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、適当な措置をとらなければならないものとすること。

(第十二条関係)

三 都道府県が処理する事務

一の勧告及び公表に係る内閣総理大臣の権限に属する事務は、全国的規模の事案に係るものである場合を除き、都道府県知事が行うこととすることができるものとすること。

(第十三条関係)

第四 その他

一 施行期日等

この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、施行日以後に締結される消費者契約について適用するものとすること。

(附則第一条関係)

二 検討条項

政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、不当条項の使用についての消費者団体による差止訴訟その他この法律の実効性を確保するための制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

(附則第二条関係)

三 商法の一部改正

商法について、所要の改正を行うものとすること。

(附則第三条関係)