参議院法制局

第145回国会参法第6号


消費者契約法(案)

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 消費者契約の適正化

第一節 消費者契約の締結過程(第三条・第四条)

第二節 消費者契約の内容(第五条―第九条)

第三節 雑則(第十条)

第三章 消費者契約の適正化の実効性の確保(第十一条―第十三条)

附則

第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、消費者が事業者と対等な立場において契約を締結することができるよう、消費者契約の効力等に関し必要な事項を定め、消費者契約の締結過程及び内容の適正化を図るとともに、その実効性を確保するための措置を講ずることにより、消費者の利益を確保し、もって国民の消費生活の安定及び向上に資することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において「消費者契約」とは、自然人が主として事業に関連しない目的で事業者と締結する契約(労働契約を除く。)をいい、「消費者」とは、この場合における当該自然人をいう。

2 この法律において「事業者」とは、主として事業に関連する目的で契約を締結する自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。

3 自然人が契約を締結する目的が主として事業に関連するかどうかについては、契約の類型、契約に係る交渉の経緯等の事情をすべて勘案したうえで、実質的に判断するものとする。

4 内閣総理大臣は、前項の判断についての指針を定めるものとする。

第二章 消費者契約の適正化

第一節 消費者契約の締結過程

 (情報不提供等の場合における契約の取消し)

第三条 事業者(事業者から消費者契約の締結について消費者を勧誘するよう依頼を受けた者及び当該者から順次その依頼を受けた者を含む。以下この条において同じ。)が、消費者に対し、消費者契約の締結に際して次の各号のいずれかに該当する行為(第一号については、情報を提供しないことをいう。以下この条において同じ。)を行った場合において、当該行為がなかったならば当該消費者が当該消費者契約を締結しなかったであろうときは、当該消費者は、当該消費者契約を取り消すことができる。

一 当該消費者契約の締結に係る消費者の判断に影響を及ぼす重要な事項(以下この条において「重要事項」という。)について、消費者が理解することができる程度に情報を提供しないこと。ただし、事業者が情報を提供しないことにつき正当な理由がある場合を除く。

二 重要事項について、不実のことを告げること。

三 威迫すること。

四 消費者の私生活又は業務の平穏を害し困惑させることその他消費者が合理的に判断することを妨げること。

五 消費者の判断力が不足している状況を濫用すること。

2 重要事項には、一般消費者の判断に影響を及ぼすと考えられる事項のほか、当該消費者の判断に影響を及ぼすことを当該事業者が知り、又は知ることができる事項を含むものとする。

3 第一項第一号の「消費者が理解することができる程度」とは、一般消費者が理解することができる程度とする。ただし、当該消費者の理解能力が著しく不足している等の事情を当該事業者が知り、又は知ることができる場合においては、当該消費者が理解することができる程度とする。

4 内閣総理大臣は、重要事項その他第一項各号に掲げる行為に係る事項について、判断の基準とするための指針を定めるものとする。

第四条 前条第一項の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

2 前条第一項の取消権は、当該消費者契約の締結を追認することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結をした時から十年を経過したときも、また同様とする。

第二節 消費者契約の内容

 (契約内容の明示)

第五条 事業者は、消費者契約の内容に関する書面を作成し、これを消費者に交付する等により消費者契約の内容を明示するよう努めなければならない。

 (不意打ち条項)

第六条 消費者契約の契約条項のうち、当該契約の外形及び交渉の経緯からみてその内容が社会通念上異常であるためその存在を一般消費者が予測できないと考えられる条項は、無効とする。

 (契約条項の明確化等)

第七条 事業者は、消費者契約の契約条項について、明確かつ平易に表現しなければならない。

 (疑義のある契約条項の解釈)

第八条 消費者契約の契約条項の意味について、一般消費者の理解を基準とした客観的解釈によっても疑義が生ずる場合は、消費者にとって有利な解釈によるものとする。

 (不当条項)

第九条 消費者契約の契約条項のうち信義誠実の要請に反して消費者に不当に不利益な条項(以下「不当条項」という。)は、無効とする。

2 次の各号のいずれかに該当する条項は、不当条項とする。ただし、当該条項が相当であると認められる事情があるときは、この限りでない。

一 事業者が一方的に法律関係の設定又は変更をすることを可能とするもの

二 消費者に過重な義務を要求するもの

三 消費者の法的地位を著しく不安定にするもの

四 消費者の法律上認められた権利を制限するもの

五 消費者の権利の実現の手段を制限する結果となるもの

3 前項の不当条項の具体的な基準については、政令で定める。

第三節 雑則

 (民法の適用)

第十条 消費者契約の締結過程及び内容の適正化については、前二節の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。

第三章 消費者契約の適正化の実効性の確保

 (不当条項の削除等の勧告)

第十一条 内閣総理大臣は、不当条項の使用により消費者の利益が著しく害され、又は害されるおそれがあると認めるときは、事業者に対し、当該不当条項の削除又は変更その他の必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表することができる。

 (内閣総理大臣に対する申出)

第十二条 何人も、消費者の利益が著しく害され、又は害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を申し出て、第二条第四項又は第三条第四項の指針の改定、第九条第三項の政令の改正、前条第一項の勧告その他の必要な措置を講ずべきことを求めることができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、適当な措置をとらなければならない。

3 第一項の申出は、政令で定めるところにより、都道府県知事を経由して行うことができる。

 (都道府県が処理する事務)

第十三条 前二条に規定する内閣総理大臣の権限(前条については、第十一条の勧告及び公表に係るものに限る。)に属する事務は、政令で定めるところにより、全国的規模の事案に係るものである場合を除き、都道府県知事が行うこととすることができる。

附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、この法律の施行の日以後に締結される消費者契約について適用する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、不当条項の使用についての消費者団体による差止訴訟その他この法律の実効性を確保するための制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (商法の一部改正)

第三条 商法(明治三十二年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

 第百九十一条中「強迫」の下に「若ハ消費者契約法(平成十一年法律第   号)第三条第一項各号ニ掲グル行為(同項第一号ニ付テハ情報ヲ提供セザルコトヲ謂フ第二百八十条ノ十二ニ於テ同ジ)」を加える。

 第二百八十条ノ十二中「強迫」の下に「若ハ消費者契約法第三条第一項各号ニ掲グル行為」を加える。

 

理 由

 契約に関する情報、交渉力等について消費者と事業者の間に構造的な格差が存在していることにかんがみ、消費者の利益を確保するため、消費者が事業者と対等な立場において契約を締結することができるよう、消費者契約の効力等に関し必要な事項を定め、消費者契約の締結過程及び内容の適正化を図るとともに、その実効性を確保するための措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。