参議院法制局

第145回国会参法第18号


労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱   

第一 題名の改正

 題名を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に改めること。

第二 一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業開始の欠格事由の追加(第六条及び第十七条関係)

 次に掲げる者を一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業開始の欠格事由として追加するものとすること。

 一 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定により、又は刑法の傷害等の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

 二 健康保険法、船員保険法、労働者災害補償保険法、厚生年金保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律又は雇用保険法の一定の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

第三 労働者派遣の受入れの制限(第二十四条の三関係)

 事業主の都合により当該事業主と当該事業主が常時雇用する労働者との雇用関係が終了した場合には、当該事業主は、当該雇用関係が終了した日の翌日から起算して一年間は、当該雇用関係が終了した労働者が従事していた業務について、労働者派遣の役務の提供を受けてはならないものとすること。

第四 関連子会社から労働者派遣の役務の提供を受けた場合における労働契約の締結(第四十条の七関係)

 一 派遣先が、関連子会社である派遣元事業主(当該派遣先が発行済株式の総数の二分の一を超える株式を有する株式会社又は資本の二分の一を超える額に相当する出資口数を有する有限会社である派遣元事業主をいう。以下同じ。)から、当該派遣先に常時雇用されていた労働者であって六十歳以上の定年その他労働省令で定める事由以外の事由により当該派遣先との雇用関係が終了した後において当該関連子会社である派遣元事業主に派遣労働者として雇用されている者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合には、当該派遣先と当該派遣労働者(当該派遣先のために初めて派遣就業をした日から起算して七日以内に当該派遣先に雇用されて同一の業務に従事することを当該派遣先に申し出た者に限る。)とは、当該申出があった日に、期間の定めのない労働契約を締結したものとみなすものとすること。

 二 一の申出があったときは、当該関連子会社である派遣元事業主と当該派遣労働者との雇用関係は、当該申出があった日に、終了したものとみなすものとすること。     

 三 派遣先は、一の申出を受けたときは、当該申出を受けた旨を当該派遣元事業主に通知しなければならないものとすること。                     

第五 秘密を守る義務等(第二十四条の四関係)

 一 派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならないものとすること。派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様とするものとすること。

 二 派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者は、一の秘密のほか、その業務に関して知り得た個人情報(個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下同じ。)その他労働省令で定める者に関する情報を、みだりに他人に知らせてはならないものとすること。派遣元事業主及びその代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様とするものとすること。

第六 労働者派遣の期間等

 一 三に抵触することとなる最初の日の通知(第二十六条第五項関係)

 派遣元事業主から新たな労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、当該労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、当該派遣元事業主に対し、当該労働者派遣の役務の提供が開始される日以後当該業務について三に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないものとすること。

 二 労働者派遣の期間(第三十五条の三関係)

 派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば三に抵触することとなる場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行ってはならないものとすること。                           

 三 労働者派遣の役務の提供を受ける期間(第四十条の六関係)

 派遣先は、当該派遣先の事業所ごとの同一の業務(その業務に従事する労働者について就業形態、雇用形態等の特殊性により特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務であって、当該業務に係る労働者派遣が労働者の職業生活の全期間にわたる能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を損なわないと認められるものとして政令で定める業務を除く。)について、派遣元事業主から一年(派遣先に雇用される労働者が産前産後休業及び育児休業(これに準ずる休業を含む。以下同じ。)をする場合における当該労働者の業務について労働者派遣の役務の提供を受ける場合にあっては、当該産前産後休業及び育児休業の期間とする。)を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないものとすること。                   

 四 直接雇用(第四十条の九関係)

 1 派遣先が、当該派遣先の同一の事業所において派遣元事業主から継続して一年を超えて同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合には、当該派遣先と当該事業所において継続して一年間派遣就業をした派遣労働者であって当該一年間が経過した日の前日までに当該派遣先に雇用されることを当該派遣先に申し出たものとは、当該一年間が経過した日に、期間の定めのない労働契約を締結したものとみなすものとすること。

 2 1の申出があったときは、当該派遣元事業主と当該派遣労働者との雇用関係は、当該一年間が経過した日に、終了したものとみなすものとすること。

 3 派遣先は、1の申出を受けたときは、当該申出を受けた旨を当該派遣元事業主に通知しなければならないものとすること。                     

第七 賃金水準の通知等

 一 賃金水準の通知(第二十六条第五項関係)

 派遣元事業主から新たな労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、当該労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、当該派遣元事業主に対し、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事することとなる業務に係る当該者の事業所における賃金水準に関する事項であって労働省令で定めるものを通知しなければならないものとすること。     

 二 派遣労働者の賃金(第三十四条の二関係)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に支払う賃金の額を定めるに当たっては、派遣先の事業所において当該派遣労働者が従事することとなる業務に係る当該事業所における賃金水準を勘案しなければならないものとすること。 

第八 派遣元事業主が講ずべき措置等(第六及び第七に掲げる事項を除く。)の改正

 一 特定派遣の禁止(第三十五条の二関係)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者のうち二分の一以上の者を同時に同一の派遣先における派遣就業に従事させてはならないものとすること。ただし、当該派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、十分の三以上が六十歳以上の者であって労働省令で定めるものである場合は、この限りでないものとすること。                              

 二 労働組合を組織する機会の確保(第三十条の二関係)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が労働組合を組織する機会の確保に関し、労働組合法等の規定に触れない範囲内において必要な配慮をするように努めなければならないものとすること。

 三 個人情報の収集制限等(第三十三条の二関係)

 1 収集することができる情報の範囲

 派遣元事業主は、労働者派遣に関し、労働者の個人情報を収集する場合には、当該労働者の有する技能、職業経験等その業務の目的の達成に必要な情報として労働省令で定める情報以外の情報を収集してはならないものとすること。ただし、本人の同意がある場合その他正当な理由があるときは、この限りでないものとすること。

 2 個人情報の保管及び使用

 派遣元事業主は、その収集した労働者の個人情報を保管し、又は使用するに当たっては、当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならないものとすること。ただし、本人の同意がある場合その他正当な理由があるときは、この限りでないものとすること。

 3 自己の個人情報の開示請求等(第三十三条の三関係)

 1 派遣労働者又は派遣労働者であった者その他労働省令で定める者(以下「派遣労働者等」という。)は、当該派遣労働者等の個人情報を保管している派遣元事業主に対し、自己の個人情報を記録した文書等の開示を請求することができるものとすること。

 2 派遣元事業主は、1の請求があったときは、当該請求をした者に対し、閲覧、写しの交付等の方法により、当該請求に係る文書等を開示しなければならないものとすること。

 3 派遣労働者等は、派遣元事業主が保管する個人情報について誤りがあると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、当該個人情報の訂正、追加又は削除を請求することができるものとすること。

 4 派遣元事業主は、1の請求があったときは、必要な調査を行い、その請求の内容が事実であると認めるときは、当該請求の内容に応じて必要な措置をとらなければならないものとすること。

四 就業条件の書面による明示(第三十四条関係)

 派遣元事業主が労働者派遣をしようとする場合において当該労働者派遣に係る派遣労働者に対して行う就業条件の明示は、就業条件を記載した書面を当該派遣労働者に交付することにより行わなければならないことを法律上明らかにするものとすること。

五 有給休暇の取得(第三十四条の三関係)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の就業の実態を的確に把握するために必要な措置を講ずること等により、当該派遣労働者が労働基準法等の定めるところにより適正に有給休暇を取得することができるようにしなければならないものとすること。

六 社会保険等の被保険者資格の通知(第三十五条関係)

 派遣元事業主が派遣先に通知すべき事項として、当該労働者派遣に係る派遣労働者の社会保険又は労働保険の被保険者の資格に関する事項を追加するものとすること。

七 労働契約の解除の制限(第三十五条の四関係)

 派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が終了する前に当該労働者派遣契約が当該労働者派遣に係る派遣労働者の責めに帰すべき事由以外の事由により解除された場合には、当該労働者派遣契約の解除を理由として、当該派遣労働者と締結した労働契約を解除してはならないものとすること。

八 新たな派遣就業の機会の確保(第三十五条の五関係)

 派遣元事業主は、七に規定する場合において、当該派遣労働者が新たな派遣就業を希望するときは、当該希望に応じた新たな派遣就業の機会を確保するように努めなければならないものとすること。

第九 派遣先が講ずべき措置等(第六に掲げる事項を除く。)の改正

一 就業条件の明示のない者の派遣就業の拒否(第四十条の三第一項関係)

 派遣先は、派遣元事業主から第八の四の書面の交付を受けていない派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならないものとすること。

二 社会保険・労働保険未加入の者の派遣就業の拒否(第四十条の三第二項関係)

 派遣先は、社会保険又は労働保険の被保険者である派遣労働者について、派遣元事業主が健康保険法等の規定による被保険者の資格の取得に関する報告又は届出をしていないときは、当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の役務の提供を受けてはならないものとすること。 

三 派遣先による事前面接の禁止等(第四十条の二及び第四十条の八関係)

1 派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けるに当たり、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に面接してはならないものとすること。

2 派遣先が、労働者派遣の役務の提供を受けるに当たり、あらかじめ、派遣労働者に面接した場合(当該派遣先が当該派遣労働者との面接を要求した場合その他労働省令で定める場合に限る。)において当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けたときは、当該派遣先と当該派遣労働者(当該派遣先のために初めて派遣就業をした日から起算して七日以内に当該派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを当該派遣先に申し出た者に限る。)とは、当該申出があった日に、期間の定めのない労働契約を締結したものとみなすものとすること。

3 1の申出があったときは、当該派遣元事業主と当該派遣労働者との雇用関係は、当該申出があった日に、終了したものとみなすものとすること。

4 派遣先は、1の申出があったときは、当該申出があった旨を当該派遣元事業主に通知しなければならないものとすること。

四 適正な派遣就業の確保等(第四十条第二項関係)

 派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設等の施設であって現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講じなければならないものとすること。

五 性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上及び指揮命令上の配慮(第四十条の四関係)

 派遣先は、当該派遣先の職場において行われる性的な言動に対するその指揮命令の下に労働させる女性である派遣労働者の対応により当該女性である派遣労働者がその就業条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性である派遣労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上及び指揮命令上必要な配慮をしなければならないものとすること。

六 派遣先との団体交渉(第四十条の五関係)

 派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が組合員となっている労働組合の代表者から、当該派遣労働者の派遣就業に係る労働条件であって、当該派遣先が現実的かつ具体的に支配し、決定することができるもの等について団体交渉の申入れがあったときは、労働組合法等の規定に違反することのないように誠実に応対しなければならないものとすること。

第十 時間外労働等に関する協定(第四十四条関係)

 派遣労働者に係る時間外労働等に関する協定は、当該派遣先の事業を行う者と当該派遣先の事業場における一般労働者と派遣労働者の合計の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は、一般労働者と派遣労働者の合計の過半数を代表する者)との間で締結するものとすること。

第十一 職業安定監督官による監督等

一 職業安定監督官等による監督(第四十九条の三及び第四十条の五関係)

1 公共職業安定所長及び職業安定監督官は、労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどるものとすること。

2 職業安定監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法の規定による司法警察員の職務を行うものとすること。

二 派遣労働者等の申告(第四十九条の六関係)

1 労働者派遣をする事業主又は労働者派遣の役務の提供を受ける者がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、派遣労働者その他の労働者は、その事実を労働大臣、公共職業安定所長又は職業安定監督官に申告することができるものとすること。

2 労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、1の申告をしたことを理由として、派遣労働者その他の労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。

三 相談及び援助(第五十二条関係)

 公共職業安定所は、派遣就業に関する事項について、労働者等の相談に応じ、及び必要な助言その他の援助を行うことができるものとすること。

四 労働者派遣事業適正運営協力員(第五十三条関係)

1 労働大臣は、社会的信望があり、かつ、労働者派遣事業の運営及び派遣労働者の就業について専門的な知識経験を有する者のうちから、労働者派遣事業適正運営協力員を委嘱することができるものとすること。

2 労働者派遣事業適正運営協力員は、労働者派遣事業の適正な運営及び適正な派遣就業の確保に関する施策に協力して、労働者派遣をする事業主、労働者派遣の役務の提供を受ける者、労働者等の相談に応じ、及びこれらの者に対する専門的な助言を行うものとすること。  

3 労働者派遣事業適正運営協力員は、正当な理由があるときでなければ、その職務に関して知り得た秘密を他に漏らしてはならないものとすること。労働者派遣事業適正運営協力員でなくなった後においても、同様とするものとすること。

4 労働者派遣事業適正運営協力員は、その職務に関して、国から報酬を受けないものとすること。

5 労働者派遣事業適正運営協力員は、予算の範囲内において、その職務を遂行するために要する費用の支給を受けることができるものとすること。

第十二 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分(第二条の二関係)

一 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主が当該業務に単に自己の雇用する労働者の肉体的な労働力を提供する者であるときは、当該事業主は労働者派遣事業を行う事業主に該当するものとすること。

二 一に定めるもののほか、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関し必要な事項は、労働省令で定めるものとすること。

第十三 罰則の整備

一 第五の一に違反した者は、三十万円以下の罰金に処するものとすること。

二 第十一の二の2に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処するものとすること。

三 罰金の額を引き上げるものとすること。

四 その他所要の罰則の整備を行うものとすること。

第十四 その他

 その他所要の規定の整備を行うものとすること。

第十五 施行期日等

一 施行期日(附則第一条関係)

 この法律は、平成十二年一月一日から施行すること。ただし、第十一の一及び二並びに第十三の二は、職業安定法等の一部を改正する法律(平成十一年法律第   号)の施行の日から施行すること。 

二 検討(附則第九条関係)

 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、派遣労働者の保護に関する制度の実施状況その他のこの法律による改正後の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の施行状況等を総合的に勘案し、一般労働者派遣事業の在り方について、その廃止を含め検討し、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとすること。