参議院法制局

第145回国会参法第12号


ものづくり基盤技術振興基本法案要綱

第一 前文

 ものづくり基盤技術及びその担い手である労働者は、国の存立基盤に関わる重要な経済的社会的役割を果たしているが、近時、経済の多様かつ構造的な変化による影響を受け、製造業の衰退が懸念されるとともに、ものづくり基盤技術の継承が困難になりつつある。我が国の国民経済が国の基幹的な産業である製造業の発展を通じて今後とも健全に発展していくためには、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的気運を醸成しつつ、ものづくり基盤技術の積極的な振興を図ることが不可欠である。ここに、ものづくり基盤技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定するものとすること。

第二 目的

 ものづくり基盤技術が国民経済において果たすべき重要な役割にかんがみ、近年における経済の多様かつ構造的な変化に適切に対処するため、ものづくり基盤技術の振興に関する施策の基本となる事項を定め、ものづくり基盤技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、ものづくり基盤技術の水準の維持及び向上を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とすること。

(第一条関係)

第三 定義

一 この法律において「ものづくり基盤技術」とは、工業製品の設計、製造又は修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業の発展を支えるものとして政令で定めるものをいうこと。

二 この法律において「ものづくり基盤産業」とは、ものづくり基盤技術を主として利用して行う事業が属する業種であって、製造業等に属するものとして政令で定めるものをいい、「ものづくり事業者」とは、ものづくり基盤産業に属する事業を行う者をいうこと。

三 この法律において「ものづくり労働者」とは、ものづくり事業者に雇用される労働者のうちものづくり基盤技術に係る業務に従事する労働者をいうこと。

(第二条関係)

第四 基本理念

一 ものづくり基盤技術の振興は、ものづくり基盤技術が製造業等に属する事業において供給される製品又は役務の価値を高める重要な要素であり、そのものづくり基盤技術はものづくり労働者によって担われていることにかんがみ、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的気運を醸成しつつ、積極的に行われなければならないものとすること。

二 ものづくり基盤技術の振興に当たっては、ものづくり基盤技術の中心的な担い手である熟練ものづくり労働者が不足していることにかんがみ、ものづくり労働者の確保及び資質の向上が図られなければならないものとすること。

三 ものづくり基盤技術の振興に当たっては、ものづくり事業者の大部分が中小企業者によって占められていることにかんがみ、中小事業者の経営基盤の強化及び取引条件に関する不利の補正が図られなければならないものとすること。

四 ものづくり基盤技術の振興に関する施策は、ものづくり事業者、ものづくり労働者又はこれらに関する団体がする自主的な努力を助長することを旨として講じられるものとすること。

(第三条関係)

第五 国の責務

 国は、ものづくり基盤技術の振興に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有するものとすること。

(第四条関係)

第六 地方公共団体の責務

 地方公共団体は、ものづくり基盤技術の振興に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有するものとすること。

(第五条関係)

第七 ものづくり事業者の責務

 ものづくり事業者は、その事業を行うに当たっては、ものづくり基盤技術に関する自主的な研究開発の実施によるほか、ものづくり労働者の労働条件の改善を通じて、ものづくり基盤技術の水準の維持及び向上に努めなければならないものとすること。

(第六条関係)

第八 法制上の措置等

 政府は、ものづくり基盤技術の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。

(第七条関係)

第九 年次報告

 政府は、毎年、国会に、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならないものとすること。

(第八条関係)

第十 ものづくり基盤技術基本計画

一 政府は、ものづくり基盤技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ものづくり基盤技術の振興に関する基本的な方針等について、ものづくり基盤技術基本計画を策定しなければならないものとするとともに、必要があると認めるときは、これを変更しなければならないものとすること。

二 政府は、ものづくり基盤技術基本計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、その概要を公表しなければならないものとすること。

(第九条関係)

第十一 基本的施策

一 ものづくり基盤技術の研究開発等

 国は、ものづくり基盤技術の水準の向上を図るため、ものづくり基盤技術に関する研究開発の実施及びその成果の普及等必要な施策を講ずるものとすること。

(第十条関係)

二 ものづくり事業者と大学等の連携

 国は、ものづくり基盤技術に関する研究開発及びその成果の利用の促進並びに研究開発に係る人材の育成に資するため、ものづくり事業者と大学等との有機的な連携が図られるよう必要な施策を講ずるものとすること。

(第十一条関係)

三 ものづくり労働者の確保等

 国は、ものづくり労働者の確保及び資質の向上を促進するため、ものづくり労働者について、雇用の安定、職業能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関し、必要な施策を講ずるものとすること。

(第十二条関係)

四 熟練ものづくり労働者の活用等

 国は、熟練ものづくり労働者の有する技能及び知識の有効な活用並びにものづくり基盤技術の継承を図るため、熟練ものづくり労働者に対する技術指導業務の委嘱等必要な施策を講ずるものとすること。

(第十三条関係)

五 産業集積の推進等

1 国は、ものづくり基盤産業における事業活動の効率化、高度化等を図るため、ものづくり事業者の新たな集積の促進又は既存の集積の有する機能の強化に必要な施策を講ずるものとすること。

2 国は、ものづくり基盤産業における新規創業等の円滑化を図るため、新規創業等に係る支援機能の充実に必要な施策を講ずるものとすること。

(第十四条関係)

六 中小企業の育成

1 国は、中小事業者の経営基盤の強化を図るため、新たな設備の設置その他資本装備の高度化、生産管理の合理化等に関し必要な施策を講ずるものとすること。

2 国は、中小事業者の取引条件に関する不利を補正するため、その下請取引の適正化に関し必要な施策を講ずるものとすること。

(第十五条関係)

七 学習の振興等

 国は、広く国民があらゆる機会を通じてものづくり基盤技術に対する関心と理解を深めるとともに、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的気運が醸成されるよう、学校教育等におけるものづくり基盤技術に関する学習の振興等に必要な施策を講ずるものとすること。

(第十六条関係)

八 国際協力

 国は、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすため、ものづくり基盤技術に関し、国際的な技術協力の推進に必要な施策を講ずるものとすること。

(第十七条関係)

九 意見の反映

 国は、ものづくり基盤技術の振興に関する施策の適正な策定及び実施に資するため、ものづくり基盤技術の関係者等の意見を国の施策に反映させるための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとすること。

(第十八条関係)

第十二 附則

 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。