第145回国会参法第7号

ダイオキシン類汚染対策緊急措置法案要綱

第一 目的(第一条関係)

 この法律は、我が国におけるダイオキシン類の排出の状況及びダイオキシン類により環境が著しく汚染されている地域における住民の健康に及ぼす影響が懸念されている状況等に対処して緊急かつ総合的に対策を講ずる必要があることにかんがみ、ダイオキシン類に係る人の健康に係る摂取量に関する基準等を定め、ダイオキシン類について大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の規定に基づく規制を行うこととし、並びにダイオキシン類による汚染の著しい地域における特別の対策を講ずること等により、ダイオキシン類による国民の健康に係る被害の発生を防止し、もって国民の健康を保護することを目的とするものとすること。

第二 定義(第二条関係)

 この法律において「ダイオキシン類」とは、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン及びコプラナーポリ塩化ビフェニルをいうものとすること。

第三 責務(第三条から第五条まで関係)

1 国及び地方公共団体は、人の健康に係る被害が未然に防止されるように、ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びダイオキシン類による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害の防止に関する施策(以下「ダイオキシン類汚染対策」という。)を、緊急かつ総合的に実施するものとすること。

2 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、ダイオキシン類の排出を抑制するために必要な措置を講ずるものとすること。

3 国民は、ダイオキシン類の排出が抑制されるよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施するダイオキシン類汚染対策に協力するように努めるものとすること。

第四 ダイオキシン類汚染対策の基本とすべき基準

一 人の健康に係る摂取量に関する基準(第六条関係)

 ダイオキシン類汚染対策の実施により達成されるべき一日に人が摂取するダイオキシン類の量の最大量についての基準は、体重一キログラム当たり一ピコグラムとするものとすること。

二 環境基準(第七条関係)

 政府は、人の健康に係る被害の未然防止の観点から、一の基準を踏まえて、ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を定めなければならないものとすること。

第五 大気及び水質に関する規制等(第八条関係)

1 ダイオキシン類は、大気汚染防止法第二条第一項第三号に規定する物質とみなして、同法その他の法律の規定を適用するものとすること。

2 ダイオキシン類は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号に規定する物質とみなして、同法その他の法律の規定を適用するものとすること。

第六 ダイオキシン類汚染状況調査計画

一 ダイオキシン類汚染状況調査計画(第九条関係)

 都道府県知事は、大気、水質(水底の底質を含む。以下同じ。)及び土壌についての調査その他の当該都道府県の区域に係るダイオキシン類による汚染の状況に関する調査を総合的かつ計画的に行うため、国の地方行政機関の長と協議して、ダイオキシン類汚染状況調査計画(以下「調査計画」という。)を作成するものとすること。

二 重点調査計画(第十条関係)

1 調査計画においては、当該都道府県の区域内に次のいずれかに該当するものとして政令で定める要件に該当する地域がある場合においては、政令で定めるところにより、当該地域をダイオキシン類による汚染に関する調査を重点的に行うべき地域(以下「重点調査地域」という。)として定めるとともに、当該地域において重点的に行うべき調査の実施に関する計画(以下「重点調査計画」という。)を定めるものとすること。

(1) ダイオキシン類による汚染の状況に関する大気、水質又は土壌の調査の結果が第四の二の環境基準を達成するものでないこと。

(2) その地域に設置されているダイオキシン類を排出するおそれがある施設の状況からみて、ダイオキシン類により、その環境が著しく汚染され、又は著しく汚染されているおそれがあること。

(3) その他ダイオキシン類により、その環境が著しく汚染され、又は著しく汚染されているおそれがあること。

2 重点調査計画においては、ダイオキシン類による汚染に関し、大気、水質及び土壌についての調査の重点的な実施に関する事項のほか、次の事項のうち必要なものを定めるものとすること。

(1) 重点調査地域においてダイオキシン類を排出する施設(以下「排出施設」という。)の調査に関する事項

(2) 重点調査地域の住民の身体の汚染の状況及び健康の状況の調査に関する事項

(3) 重点調査地域及びこれに係る水域において生産され、又は採捕される農林畜水産物の汚染の状況の調査に関する事項

(4) (3)に定めるもののほか、重点調査地域及びこれに係る水域における動植物の汚染の状況の調査に関する事項

(5) その他必要な事項

3 都道府県知事は、調査計画において重点調査計画を定めるときは、あらかじめ、国の地方行政機関の長及び関係市町村長と協議しなければならないものとすること。

4 市町村長は、当該市町村の区域内に、1の政令で定める要件に該当する地域があると認めるときは、都道府県知事に対し、調査計画において当該地域を重点調査地域として定めるよう要請することができるものとすること。

5 市町村長は、都道府県知事に対し、当該市町村の区域に係る重点調査計画において定めるべき事項に関し、意見を述べることができるものとすること。

三 調査計画の変更(第十二条関係)

 調査計画は、重点調査地域又は重点調査計画を定め、又は変更する必要がある場合その他必要がある場合には、これを変更することができるものとすること。

四 技術上の指針(第十三条関係)

1 調査計画に基づき行う調査の方法に関して従うべき技術上の指針は、総理府令、厚生省令、農林水産省令で定めるものとすること。

2 1の技術上の指針は、ダイオキシン類による汚染の状況が的確に把握されるよう定めるものとすること。

五 調査の実施等(第十四条第一項関係)

1 都道府県知事は、ダイオキシン類による汚染の状況が的確に把握されるように調査計画を定め、及び実施するものとすること。

2 国及び地方公共団体は、調査計画に従って調査を実施し、その結果を都道府県知事に送付するものとすること。

六 調査結果の公表(第十五条関係)

 都道府県知事は、調査計画に基づく調査の結果を公表するものとすること。

七 立入調査(第十六条関係)

 都道府県知事は、ダイオキシン類による汚染に関し、土壌又は二の2の(1)若しくは(3)に掲げる事項に関する調査計画に基づく調査を行うため必要があるときは、その限度において、その職員に、他人の土地、排出施設その他の場所に立ち入り、土壌若又は排出施設若しくは農作物等若しくは農林畜水産物につき、調査させ、又は調査のため必要な最少量に限り土壌若しくは農作物等若しくは農林畜水産物を無償で集取させることができるものとすること。

第七 ダイオキシン類汚染特別対策地域

一 ダイオキシン類汚染特別対策地域の指定(第十七条第一項、第三項及び第五項関係)

1 都道府県知事は、第四の二の環境基準を満たさない地域であって、その地域内の土地の土壌若しくはその地域に係る水域の水底の底質の汚染の除去等又はその地域に居住する住民の健康の管理が必要な政令で定める範囲の地域を、政令で定めるところにより、ダイオキシン類汚染特別対策地域(以下「特別対策地域」という。)として指定するものとすること。

2 都道府県知事は、特別対策地域を指定しようとするときは、都道府県環境審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならないものとすること。

3 市町村長は、当該市町村の区域内に、1の地域があると認める場合には、都道府県知事に対し、当該地域を特別対策地域として指定するよう要請することができるものとすること。

二 特別対策計画(第十九条第一項、第二項及び第四項関係)

1 都道府県知事は、特別対策地域を指定したときは、当該特別対策地域において実施すべき汚染の除去等又は住民の健康の管理のための事業等の実施に関する計画(以下「特別対策計画」という。)を定めるものとすること。

2 特別対策計画においては、次の事業等のうち必要なものを定めるものとすること。

(1) 汚染土壌の除去、覆土その他の土地の土壌のダイオキシン類による汚染を除去し、又はこれによる被害の発生を防止するための事業

(2) ダイオキシン類がたい積している河川その他の水域においてダイオキシン類による汚染を除去し、又はこれによる被害の発生を防止するための事業

(3) 住民の健康診断の実施その他の住民の健康の管理に関する事項

3 都道府県知事は、特別対策計画を定めようとするときは、都道府県環境審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならないものとすること。

三 特別対策計画の変更(第二十条第一項関係)

 都道府県知事は、特別対策地域の区域の変更により、又は特別対策地域の区域内のダイオキシン類による環境の汚染の状況の変動等が生じたときは、特別対策計画を変更することができるものとすること。

四 費用の負担(第二十一条関係)

 特別対策地域において実施される特別対策計画に基づく二の2の(1)及び(2)の事業に要する費用の事業者の負担に関しては、公害防止事業費事業者負担法の定めるところによるものとすること。

五 農林畜産物等に係る措置(第二十二条関係)

 特別対策地域が指定された場合においては、関係行政機関の長は、当該地域及びこれに係る水域において生産され、又は採捕される農林畜水産物その他これらに係る食品につき、その汚染の状況に応じて必要となる措置を講ずるものとすること。

六 ダイオキシン類汚染物に係る措置(第二十三条関係)

 特別対策計画に基づく事業により除去した土砂その他のダイオキシン類により汚染された物については、これを廃棄し、利用し、又は再生利用する場合においては、環境の保全を図る上で必要な措置を講じなければならないものとすること。

七 営農に関する指導及び助言等(第二十四条関係)

1 都道府県知事は、特別対策地域が指定された場合には、当該地域内の農用地のダイオキシン類による汚染の状況その他の事情を考慮して、当該農用地における営農に関し必要となる指導及び助言をすることができるものとすること。

2 1に定めるもののほか、国及び地方公共団体は、特別対策地域において、ダイオキシン類による汚染に起因してその事業に影響を受ける農林漁業者等に対し、その事業の経営及び生活の安定が図られるよう必要な配慮をするものとすること。

第八 ダイオキシン類汚染対策に係る住民の関与

一 総量規制地域の指定に係る住民の申出(第二十六条関係)

1 住民は、都道府県知事に対し、大気汚染防止法第五条の二第五項の申出をするよう申し出ることができるものとすること。

2 都道府県知事は、1により申出を受けた場合において、当該申出に係る地域に関し大気汚染防止法第五条の二第五項の申出をしないときは、総理府令で定めるところにより、当該申出に係る住民に対し、遅滞なく、その旨及びその理由を通知しなければならないものとすること。

二 重点調査地域及び特別対策地域の指定の申出等(第二十七条関係)

1 住民は、都道府県知事に対し調査計画において重点調査地域を定めるよう、若しくは特別対策地域を指定するよう申し出、又は市町村長に対し第六の二の4若しくは第七の一の3の要請をするよう申し出ることができるものとすること。

2 都道府県知事は、1の規定により申出を受けた場合において、当該申出に係る地域を調査計画において重点調査地域として定めないとき又は特別対策地域として指定しないときは、総理府令で定めるところにより、当該申出に係る住民に対し、遅滞なく、その旨及びその理由を通知しなければならないものとすること。

3 住民は、都道府県知事に対し重点調査計画若しくは特別対策計画において定めるべき事項に関し意見書を提出し、又は市町村長に対し第六の二の5若しくは第七の二の3の意見を述べるよう申し出ることができるものとすること。

第九 雑則

一 ダイオキシン類発生施設等に係る労働者の健康被害の発生の防止等(第二十八条関係)

 国は、ダイオキシン類が発生し又はこれを処理し若しくは処分する施設における業務に従事し、又は従事したことのある労働者の健康に係る被害の発生の防止その他のその健康管理が図られるよう、法制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

二 国の助成等(第二十九条関係)

1 国は、地方公共団体が実施する調査計画に基づく調査及び特別対策地域における特別対策計画に基づく事業等に関し、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

2 国及び地方公共団体は、住民又は住民の組織する団体がダイオキシン類による汚染の状況の調査その他のダイオキシン類による汚染に関して行う自発的な活動について、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ必要な情報の提供をし、及びその他必要な支援を行うものとすること。

三 食品に係る措置(第三十条関係)

 国及び地方公共団体は、食品に関し、そのダイオキシン類による汚染の状況について調査するとともに、その結果に基づき、第四の一の基準を踏まえて必要となる措置を講ずるものとすること。

四 毒性換算に用いる係数の改定(第三十二条関係)

 政府は、ダイオキシン類汚染対策の実施に用いる二・三・七・八―四塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシンの量に換算するための係数については、その策定後においても、引き続き、その毒性を適切に反映することを確保する上で必要な研究を行い、必要な改定をするものとすること。

第十 罰則(第三十三条関係)

 必要な罰則を設けるものとすること。

第十一 雑則

一 施行期日(附則第一条関係)

 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第六(二の1の(1)を除く。)の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。

二 総合的対策の確立(附則第二条関係)

 政府は、ダイオキシン類に関する科学的知見の充実を図り、その成果に基づき、ダイオキシン類に関する環境基本法第十六条第一項の基準を定めるとともに、その基準の達成等を図るため、大気、水質及び土壌の環境全般にわたって、総合的な対策が講ぜられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

三 この法律の廃止(附則第三条関係)

 この法律は、二の措置が講ぜられるに至ったときは、廃止するものとすること。

四 検討(附則第四条関係)

 政府は、廃棄物の処分の段階を考慮した製品への転換並びに廃棄物の発生の抑制及び再生利用の促進その他の施策を通じて循環社会を形成することにより、ダイオキシン類を排出するおそれがある処分を要する廃棄物の減量化を図るため、検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。

五 その他

 その他必要な規定の整備を行うものとすること。