参議院法制局

第143回国会参法第1号


金融機能の正常化に関する特別措置法(案)

目次

第一章 総則(第一条−第三条)

第二章 金融機関の財務内容等の透明性の確保(第四条・第五条)

第三章 破綻した金融機関の預金保険機構による管理(第六条−第二十条)

第四章 預金保険機構の業務の特例(第二十一条−第二十七条)

第五章 雑則(第二十八条−第三十三条)

第六章 罰則(第三十四条−第三十八条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、金融機関の破綻が相次いで発生し、我が国の金融の機能が大きく低下するとともに、金融機関の救済のために多額の公的資金が投入されている状況にあることにかんがみ、金融機関の自己責任の原則にのっとり我が国の金融の機能の安定及びその正常化を図るため、金融機関の破綻の処理の原則を定めるとともに、金融機関の貸付けの投機性等を明らかにした金融機関の財務内容の開示並びに破綻した金融機関の預金保険機構(以下「機構」という。)による管理及び承継銀行の設立の制度を設けること等により信用秩序の維持と預金者等の保護を確保することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「金融機関」とは、預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関をいう。

2 この法律において「預金等」とは、預金保険法第二条第二項に規定する預金等をいう。

3 この法律において「預金者等」とは、預金保険法第二条第三項に規定する預金者等をいう。

4 この法律において「被管理金融機関」とは、第六条第一項の規定により機構による業務及び財産の管理を命ずる処分を受けた金融機関をいう。

5 この法律において「承継銀行」とは、営業若しくは事業の譲受け又は合併(以下「営業の譲受け等」という。)により被管理金融機関の業務を引き継ぎ、かつ、当該引き継いだ業務を暫定的に維持継続することを主たる目的とする銀行をいう。

(金融機関の破綻処理の原則)

第三条 我が国の金融の機能の安定及びその正常化を図るため、金融監督委員会が講ずる金融機関の破綻に対する施策は、次に掲げる原則によるものとし、平成十三年三月三十一日までに実施するものとする。

一 金融機能の安定及びその正常化を図るための費用は、自己責任の原則にのっとり金融機関の負担によるべきものとすること。

二 預金者等を保護するものとすること。

三 金融機関の金融仲介機能を維持するものとすること。

四 金融機関の破綻処理に係る費用が最小となるようにすること。

第二章 金融機関の財務内容等の透明性の確保

(資産の査定の報告)

第四条 金融機関は、決算期その他金融監督委員会規則で定める期日において資産の査定を行い、金融監督委員会規則で定めるところにより、その結果及び貸付資金の使途並びに回収不能となる危険性の高い債権に対する引当ての状況について資産査定等報告書を作成し、金融監督委員会(当該金融機関が一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合である場合にあっては当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関が労働金庫である場合にあっては金融監督委員会及び労働大臣とする。第六条第三項において同じ。)に提出しなければならない。

2 前項の「資産の査定」とは、金融監督委員会規則で定める基準に従い、回収不能となる危険性又は価値の毀損の危険性に応じてその有する債権その他の資産を区分することをいう。

(資産の査定の公表)

第五条 金融機関は、前条の規定による資産の査定を行ったときは、金融監督委員会規則で定めるところにより、その区分に係る資産の合計額及び貸付資金の使途別の合計額、回収不能となる危険性の高い債権に対する引当ての状況その他の金融監督委員会規則で定める事項を公表しなければならない。

第三章 破綻した金融機関の預金保険機構による管理

(業務及び財産の管理を命ずる処分)

第六条 金融監督委員会(この項に規定する処分に係る金融機関が一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合である場合にあっては当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関が労働金庫である場合にあっては金融監督委員会及び労働大臣とする。第八条(第十四条第三項において準用する場合を含む。)、第十条、第十一条第一項から第三項まで、第五項及び第六項並びに第十四条第一項において同じ。)は、平成十三年三月三十一日までを限り、信用秩序の維持及び預金者等の保護を図るため、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合その他金融機関がその業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあると認める場合又は金融機関が預金等の払戻しを停止した場合であって、次に掲げる要件に該当すると認めるときは、当該金融機関に対し、機構による業務及び財産の管理を命ずる処分をすることができる。

一 当該金融機関について、営業譲渡等(他の金融機関への営業若しくは事業の譲渡若しくは他の金融機関との合併又は他の金融機関若しくは銀行持株会社等に株式を取得されることによりその子会社(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社をいう。以下同じ。)となることをいう。以下同じ。)が行われないこと。

二 その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。

2 前項に規定する「銀行持株会社等」とは、次に掲げる者をいう。

一 銀行法第二条第十一項に規定する銀行持株会社

二 株式を取得することにより銀行を子会社とする持株会社(銀行法第五十二条の二第一項に規定する銀行を子会社とする持株会社をいう。)となることについて同項の認可を受けた会社

三 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第十六条の四第一項に規定する長期信用銀行持株会社

四 株式を取得することにより長期信用銀行を子会社とする持株会社(長期信用銀行法第十六条の二第一項に規定する長期信用銀行を子会社とする持株会社をいう。)となることについて同項の認可を受けた会社

3 平成十三年三月三十一日までを限り、金融機関は、その財産をもって債務を完済することができないことが明らかであるときその他その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあるときは、文書をもってその旨を金融監督委員会に申し出なければならない。

4 一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合の監督に係る都道府県知事が当該信用協同組合に対して第一項の規定による処分をしたときは、直ちに、その旨を金融監督委員会に報告しなければならない。

(被管理金融機関の代表権等)

第七条 前条第一項の規定による機構による業務及び財産の管理を命ずる処分(以下「管理を命ずる処分」という。)があったときは、被管理金融機関を代表し、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は、機構に専属する。商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百四十七条(信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第四十九条、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第五十四条及び労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第五十四条において準用する場合を含む。)、商法第二百八十条ノ十五、同法第三百八十条(信用金庫法第五十二条第三項(同法第五十八条第五項において準用する場合を含む。)、中小企業等協同組合法第五十七条第三項(同法第五十七条の三第四項において準用する場合を含む。)及び労働金庫法第五十七条第三項(同法第六十二条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)、商法第四百十五条(信用金庫法第六十一条、中小企業等協同組合法第六十六条及び労働金庫法第六十五条において準用する場合を含む。)及び商法第四百二十八条(信用金庫法第二十八条、中小企業等協同組合法第三十二条及び労働金庫法第二十八条において準用する場合を含む。)の規定による取締役(被管理金融機関が信用金庫、信用協同組合又は労働金庫である場合にあっては、理事。以下この章において同じ。)の権利についても、同様とする。

2 会社更生法(昭和二十七年法律第百七十二号)第九十八条の四の規定は機構について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条第一項の規定は被管理金融機関について、それぞれ準用する。この場合において、民法第四十四条第一項中「理事其他ノ代理人」とあるのは「預金保険機構」と読み替えるものとする。

(通知及び登記)

第八条 金融監督委員会は、管理を命ずる処分をしたときは、直ちに、被管理金融機関の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所にその旨を通知し、かつ、嘱託書に当該命令書の謄本を添付して、被管理金融機関の本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所の所在地の登記所に、その登記を嘱託しなければならない。

(株主の名義書換の禁止)

第九条 被管理金融機関が銀行である場合において、金融監督委員会は、必要があると認めるときは、株主の名義書換を禁止することができる。

(機構の報告義務)

第十条 機構は、管理を命ずる処分があったときは、遅滞なく、次に掲げる事項を調査し、金融監督委員会に報告しなければならない。

一 被管理金融機関が管理を命ずる処分を受ける状況に至った経緯

二 被管理金融機関の業務及び財産の状況

三 被管理金融機関に係る営業譲渡等の見込み

四 その他必要な事項

2 金融監督委員会は、機構に対し、前項の規定による調査及び報告に関し必要な措置を命ずることができる。

(計画の作成等)

第十一条 金融監督委員会は、被管理金融機関に係る営業譲渡等のため必要があると認めるときは、機構に対し、次に掲げる事項を含む被管理金融機関の業務及び財産の管理に関する計画の作成を命ずることができる。

一 被管理金融機関の資金の貸付けその他の業務の暫定的な維持継続に係る方針に関すること。

二 被管理金融機関に係る営業譲渡等を円滑に行うための方策に関すること。

2 機構は、前項の計画を作成したときは、金融監督委員会の承認を得なければならない。

3 機構は、やむを得ない事情が生じた場合には、金融監督委員会の承認を受けて、第一項の計画を変更し、又は廃止することができる。

4 機構は、第二項の規定による承認又は前項の規定による変更の承認があったときは、遅滞なく、当該承認を受けた第一項の計画又は前項の規定による変更後の計画(以下この条において「計画」という。)を実行に移さなければならない。

5 金融監督委員会は、機構に対し、計画の実行に関し必要な措置を命ずることができる。

6 金融監督委員会は、必要があると認めるときは、機構に対し、計画の変更又は廃止を命ずることができる。

7 被管理金融機関の取締役、監査役(被管理金融機関が信用金庫、信用協同組合又は労働金庫である場合にあっては、監事。次条及び第十三条において同じ。)及び支配人(被管理金融機関が信用協同組合又は労働金庫である場合にあっては、参事。次条において同じ。)その他の使用人は、機構による計画の実行に協力しなければならない。

(機構の調査等)

第十二条 機構は、被管理金融機関の取締役、監査役及び支配人その他の使用人並びにこれらの者であった者に対し、被管理金融機関の業務及び財産の状況(これらの者であった者については、その者が当該被管理金融機関の業務に従事していた期間内に知ることのできた事項に係るものに限る。)につき報告を求め、又は被管理金融機関の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。

2 機構は、この章の規定による業務を行うため必要があるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。

(被管理金融機関の経営者の破綻の責任を明確にするための措置)

第十三条 機構は、被管理金融機関の取締役若しくは監査役又はこれらの者であった者の職務上の義務違反に基づく民事上の責任を履行させるため、訴えの提起その他の必要な措置をとらなければならない。

2 機構は、この章の規定による業務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

(管理を命ずる処分の取消し)

第十四条 金融監督委員会は、管理を命ずる処分について、その必要がなくなったと認めるときは、当該管理を命ずる処分を取り消さなければならない。

2 第六条第四項の規定は、都道府県知事が前項の規定により管理を命ずる処分を取り消した場合について準用する。

3 第八条の規定は、第一項の場合について準用する。

(会社整理に関する商法の規定の不適用)

第十五条 商法第三百八十一条第一項、第三百八十六条第一項(第六号から第九号までを除く。)及び第二項、第三百八十七条第一項、第三百八十八条から第三百九十一条まで、第三百九十七条並びに第三百九十八条の規定は、管理を命ずる処分があった場合における当該管理を命ずる処分に係る被管理金融機関については、適用しない。

(株主総会等の特別決議等に関する特例)

第十六条 被管理金融機関における商法第二百十四条第一項、第二百四十五条第一項、第二百八十条ノ二第二項、第三百四十六条若しくは第三百七十五条第一項の規定による決議、同法第二百五十七条第二項(同法第二百八十条第一項において準用する場合を含む。)、第三百四十三条、第三百四十五条第二項、第四百五条若しくは第四百八条第三項に規定する決議、信用金庫法第四十八条、中小企業等協同組合法第五十三条若しくは労働金庫法第五十三条の規定による議決又は金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)第七条第三項(第一号において準用する商法第四百八条第三項に係る部分に限る。)若しくは同法第七条第六項の規定による合併決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主又は会員、組合員若しくは代議員若しくは総代(以下「株主等」という。)の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。

2 被管理金融機関における商法第三百四十八条第一項若しくは第四百八条第四項の規定による決議又は金融機関の合併及び転換に関する法律第七条第三項(第一号において準用する商法第四百八条第四項に係る部分及び金融機関の合併及び転換に関する法律第七条第三項第二号に係る部分に限る。)の規定による合併決議若しくは同法第七条第五項に規定する決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主の過半数であって出席した株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。

3 第一項の規定により仮にした決議、議決又は合併決議(以下「仮決議等」という。)があった場合においては、各株主等に対し、当該仮決議等の趣旨を通知し、当該仮決議等の日から一月以内に再度の株主総会又は総会若しくは総代会(以下「株主総会等」という。)を招集しなければならない。

4 前項の株主総会等において第一項に規定する多数をもって仮決議等を承認した場合には、当該承認のあった時に、当該仮決議等をした事項に係る決議、議決又は合併決議があったものとみなす。

5 前二項の規定は、第二項の規定により仮にした決議又は合併決議があった場合について準用する。この場合において、前項中「第一項に規定する多数」とあるのは、「第二項に規定する多数」と読み替えるものとする。

(株主総会等の特別決議等に代わる許可)

第十七条 銀行である被管理金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合には、当該被管理金融機関は、商法第二百四十五条、第三百七十五条及び第四百五条の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項を行うことができる。

一 営業の全部又は重要な一部の譲渡

二 資本の減少

三 解散

2 信用金庫、信用協同組合又は労働金庫である被管理金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合には、当該被管理金融機関は、信用金庫法第四十八条、中小企業等協同組合法第五十三条及び労働金庫法第五十三条の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項を行うことができる。

一 解散

二 事業の全部の譲渡

3 前二項に規定する許可(以下この条及び次条において「代替許可」という。)があったときは、当該代替許可に係る事項について株主総会等の決議又は議決があったものとみなす。

4 代替許可に係る事件は、当該被管理金融機関の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

5 非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十三条ノ二第四項及び第五項の規定は、代替許可の申立てがあった場合について準用する。

6 代替許可の申立てに係る裁判に対しては、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が解散に係る代替許可の決定に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。

7 前三項に規定するもののほか、代替許可に係る事件に関しては、非訟事件手続法第一編(第二条から第四条まで、第十五条及び第十六条を除く。)の規定を準用する。

(代替許可に係る登記の特例)

第十八条 前条第一項第二号若しくは第三号又は第二項第一号に掲げる事項に係る代替許可があった場合においては、当該事項に係る登記の申請書には、当該代替許可の決定書の謄本又は抄本を添付しなければならない。

(債権者保護手続の特例)

第十九条 銀行である被管理金融機関が資本減少の決議をした場合においては、預金者その他政令で定める債権者に対する商法第三百七十六条第二項において準用する同法第百条の規定による催告は、することを要しない。

(金融監督委員会規則等への委任)

第二十条 この章の規定を実施するための手続その他その執行について必要な事項は、金融監督委員会規則(労働金庫に係る事項については、総理府令・労働省令)で定める。

第四章 預金保険機構の業務の特例

(機構の業務の特例)

第二十一条 機構は、預金保険法第三十四条に規定する業務のほか、前章の規定による業務、次条の規定による業務及び第二十三条の規定による業務を行うことができる。

(破綻した金融機関の機構による営業譲渡等のあっせん)

第二十二条 機構は、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合その他金融機関がその業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあると認める場合又は金融機関が預金等の払戻しを停止した場合には、当該金融機関の営業譲渡等のあっせんを行うことができる。

(破綻した金融機関の業務承継に係る業務)

第二十三条 機構は、破綻した金融機関の業務承継(承継銀行が営業の譲受け等により業務を引き継ぎ、かつ、その業務を暫定的に維持継続することをいう。第二号において同じ。)の実現を図ることにより第一条の目的を達成するため、次の業務を行うことができる。

一 承継銀行となる株式会社の設立の発起人となり、及び当該設立の発起人となった株式会社を設立するための出資をすること。

二 前号の規定により出資して設立された承継銀行と、被管理金融機関の業務承継に関する協定(以下「協定」という。)を締結すること。

三 協定を締結した承継銀行(以下「協定承継銀行」という。)に対し、第二十五条の規定による貸付け又は債務の保証を行うこと。

四 協定承継銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により生じた損失の補てんを行うこと。

五 次条第五号の規定に基づき協定承継銀行から納付される金銭の収納を行うこと。

六 協定承継銀行に対し、協定の定めによる業務の実施に必要な指導及び助言を行うこと。

七 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。

(協定)

第二十四条 協定は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。

一 協定承継銀行は、次に掲げる事項を実施すること。

イ 被管理金融機関から業務を引き継ぐため営業の譲受け等を行うこと。

ロ 被管理金融機関の貸出債権その他の資産を引き継ぐこと。

ハ 資金の貸付けその他の業務の実施に際しては、次号に規定する指針に従うこと。

二 協定承継銀行は、法務、金融、会計等に精通している者を構成員とする委員会(以下この条において「融資審査委員会」という。)を設置し、融資審査委員会において協定承継銀行の資金の貸付けその他の業務の指針を作成し機構の承認を受けた後公表すること。

三 前号の指針は、資金の貸付けその他の業務の暫定的な維持継続を図るという承継銀行の目的を踏まえ、協定承継銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保する観点に立って作成されるものであること。

四 第二号の指針は、協定承継銀行が資金の貸付けその他の業務のうち融資審査委員会の指定する取引について融資審査委員会の承認を受けて行うことを内容として含むものであること。

五 協定承継銀行は、協定の定めによる業務の実施により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すること。

六 協定承継銀行は、速やかに、営業譲渡等によりその業務を終了すること。

(資金の貸付け及び債務の保証)

第二十五条 機構は、協定承継銀行から、協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定承継銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証の申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、当該貸付け又は債務の保証を行うことができる。

(損失の補てん)

第二十六条 機構は、協定承継銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定承継銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。ただし、当該損失の補てんを行うことが適当でない場合として政令で定める場合は、この限りでない。

(報告の徴求)

第二十七条 機構は、第二十三条の規定による業務を行うため必要があるときは、協定承継銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。

第五章 雑則

(根抵当権の譲渡に係る特例)

第二十八条 被管理金融機関が承継銀行その他の金融機関(以下「承継金融機関」という。)に対する営業又は事業の全部又は一部の譲渡により元本の確定前に根抵当権をその担保すべき債権の全部とともに譲渡しようとするときは、当該被管理金融機関及び当該承継金融機関は、次に掲げる事項について異議のある根抵当権設定者は当該被管理金融機関に対し一定の期間内に異議を述べるべき旨を公告することができる。

一 当該被管理金融機関から当該承継金融機関に当該根抵当権が譲渡されること及びその期日

二 当該根抵当権の譲渡の後においても当該根抵当権が当該債権を担保すべきものとすること。

2 前項の期間は、二週間を下ってはならない。

3 第一項の公告に係る根抵当権設定者が同項各号に掲げる事項について同項の期間内に異議を述べなかったときは、同項第一号に掲げる事項について当該根抵当権設定者の承諾が、同項第二号に掲げる事項について当該根抵当権設定者と同項の公告に係る承継金融機関の合意が、それぞれあったものとみなす。

4 根抵当権設定者が第一項各号に掲げる事項の一部について異議を述べたときは、同項各号に掲げる事項の全部について異議を述べたものとみなす。

5 前各項の規定は、承継銀行が他の金融機関に対する営業又は事業の全部又は一部の譲渡により元本の確定前に根抵当権をその担保すべき債権の全部とともに譲渡しようとする場合について準用する。

(根抵当権移転登記等の申請手続の特例)

第二十九条 前条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の場合における根抵当権の移転の登記の申請書には、公告をしたこと及び根抵当権設定者が同条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の期間内に異議を述べなかったことを証する書面を添付しなければならない。

2 前条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の場合における根抵当権の担保すべき債権の範囲に譲渡に係る債権を追加することを内容とする根抵当権の変更の登記は、申請書に前項に規定する書面を添付したときは、根抵当権者のみで申請することができる。

(課税の特例)

第三十条 第八条(第十四条第三項において準用する場合を含む。)の規定による登記については、登録免許税を課さない。

2 承継銀行が被管理金融機関の営業の譲受け等により不動産に関する権利の取得をした場合には、当該不動産に関する権利の移転の登記については、大蔵省令で定めるところにより当該取得後一年以内に登記を受けるものに限り、登録免許税を課さない。

3 承継銀行が被管理金融機関の営業の譲受け等により取得した土地又は土地の上に存する権利の譲渡(租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第六十二条の三第二項第一号イに規定する譲渡をいい、同号ニに掲げる行為を含む。)は、承継銀行(当該土地又は土地の上に存する権利の譲渡が同号ニに掲げる行為の場合にあっては、承継銀行と合併する被管理金融機関を含む。)に係る同法第六十二条の三及び第六十三条の規定の適用については、同法第六十二条の三第二項第一号に規定する土地の譲渡等には該当しないものとする。

(預金保険法の適用)

第三十一条 この法律により機構の業務が行われる場合には、この法律の規定によるほか、預金保険法を適用する。この場合において、同法第四十四条中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能の正常化に関する特別措置法(平成十年法律第   号。以下「金融機能正常化特別措置法」という。)」と、同法第四十五条第二項及び第四十六条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能正常化特別措置法」と、同法第九十一条第三号中「第三十四条に規定する業務」とあるのは「第三十四条に規定する業務及び金融機能正常化特別措置法第三章、第二十二条及び第二十三条に規定する業務」とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

(権限の委任)

第三十二条 金融監督委員会は、この法律による権限(第六条第一項の規定による処分その他政令で定めるものを除く。)を金融監督庁長官に委任する。

2 金融監督庁長官は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限(第三章の規定による権限に限る。)の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。

3 前項の規定により財務局長又は財務支局長に委任された権限に係る事務に関しては、金融監督庁長官が財務局長又は財務支局長を指揮監督する。

(政令への委任)

第三十三条 この法律に規定するもののほか、この法律を実施するために必要な事項は、政令で定める。

第六章 罰則

第三十四条 第四条第一項の資産査定等報告書に虚偽の記載をして提出した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 第四条第一項の規定に違反して、資産査定等報告書の提出をしない者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第三十五条 被管理金融機関の取締役若しくは理事、監査役若しくは監事若しくは支配人若しくは参事その他の使用人又はこれらの者であった者が第十二条第一項(第七条第一項及び第十一条第七項の規定により読み替えて適用される場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第十二条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第三十六条 第二十七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

第三十七条 法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対しても当該各号に定める罰金刑を科する。

一 第三十四条第一項 五億円以下の罰金刑

二 第三十四条第二項 三億円以下の罰金刑

三 前条 同条の刑

第三十八条 被管理金融機関の取締役又は理事が機構に事務の引渡しをしないときは、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。

2 金融機関の取締役又は理事が第六条第三項の規定に違反して、申出をせず、又は虚偽の申出をしたときは、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。

附 則

(施行期日)

第一条 この法律は、金融監督委員会設置法(平成十年法律第   号)の施行の日から施行する。

(経過措置)

第二条 金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)の施行の日の前日までの間における第六条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項中「銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社」とあるのは「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)による改正前の銀行法(昭和五十六年法律第五十九号。以下「旧銀行法」という。)第五十二条の二第二項に規定する子会社又は同条第三項の規定により子会社とみなされる会社」と、同条第二項中「銀行法第二条第十一項」とあるのは「旧銀行法第五十二条の二第一項」と、「銀行法第五十二条の二第一項」とあるのは「旧銀行法第五十二条の三第一項」とする。

(地方税法の一部改正)

第三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

 附則第十条に次の一項を加える。

8 道府県は、金融機能の正常化に関する特別措置法(平成十年法律第   号)第二条第五項に規定する承継銀行が同条第四項に規定する被管理金融機関の営業又は事業の譲受けにより不動産を取得した場合には、当該取得が平成十三年三月三十一日までに行われたときに限り、第七十三条の二第一項の規定にかかわらず、当該不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。

 附則第三十一条の二の二第一項中「附則第十条第六項」の下に「又は第八項」を加える。

 

理 由

 金融機関の破綻が相次いで発生し、我が国の金融の機能が大きく低下するとともに、金融機関の救済のために多額の公的資金が投入されている状況にあることにかんがみ、金融機関の自己責任の原則にのっとり我が国の金融の機能の安定及びその正常化を図るため、金融機関の破綻の処理の原則を定めるとともに、金融機関の貸付けの投機性等を明らかにした金融機関の財務内容の開示並びに破綻した金融機関の預金保険機構による管理及び承継銀行の設立の制度を設けること等により信用秩序の維持と預金者等の保護を確保する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

この法律の施行により歳入減となる見込額

 この法律の施行により歳入減となる額は、平年度約六十億円の見込みである。