参議院法制局

第140回国会参法第9号


民法の一部を改正する法律案要綱

第一 婚姻の成立

一 婚姻適齢(第七百三十一条関係)

 十八歳に達しない者は、婚姻をすることができないものとする。

二 再婚禁止期間(第七百三十三条関係)

1 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。

2 女が前婚の解消又は取消しの日以後に出産したときは、その出産の日から、1を適用しないものとする。

第二 再婚禁止期間内の婚姻の取消権の消滅(第七百四十六条関係)

 第一の二に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消しを請求することができないものとする。

第三 夫婦の氏(第七百五十条関係)

一 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。

二 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

第四 子の氏

一 嫡出である子の氏(第七百九十条関係)

 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又は父母が第三の二により子が称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。

二 養子の氏(第八百十条関係)

1 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦がともに養子をするときは、養親が第三の二により子が称する氏として定めた氏)を称するものとする。

2 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とするときは、養子は、1にかかわらず、養親とその配偶者が第三の二により子が称する氏として定めた氏を称するものとする。

3 養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、1及び2を適用しないものとする。

三 子の氏の変更(第七百九十一条関係)

1 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができないものとする。

2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏又はその父若しくは母の氏を称することができるものとする。

3 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合において、子が第三の二により子が称する氏として定められた父又は母の氏と異なる氏を称するときは、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでないものとする。

4 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、1から3までの行為をすることができるものとする。

5 1から4までによって氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができるものとする。

第五 夫婦間の契約取消権(第七百五十四条関係)

 第七百五十四条の規定は、削除するものとする。

第六 協議上の離婚

一 子の監護に必要な事項の定め(第七百六十六条関係)

1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及び交流、子の監護に要する費用の分担その他の監護について必要な事項は、その協議でこれを定めるものとする。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとする。

2 1の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、1の事項を定めるものとする。

3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、1又は2による定めを変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができるものとする。

4 1から3までは、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生ずることがないものとする。

二 離婚後の財産分与(第七百六十八条関係)

1 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるものとする。

2 1による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるものとする。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでないものとする。

3 2の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその協力によって取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めるものとする。この場合において、当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

第七 裁判上の離婚(第七百七十条関係)

一 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができるものとする。ただし、(1)又は(2)に掲げる場合については、婚姻関係が回復の見込みのない破綻に至っていないときは、この限りでないものとする。

(1) 配偶者に不貞な行為があったとき。

(2) 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

(3) 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

(4) 夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。

(5) (3)、(4)のほか、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないとき。

二 裁判所は、一の場合であっても、離婚が配偶者又は子に著しい生活の困窮又は耐え難い精神上の苦痛をもたらすときは、離婚の請求を棄却することができるものとする。(4)又は(5)の場合において、離婚の請求をしている者が配偶者に対する協力及び扶助を著しく怠っていることによりその請求が信義に反すると認められるときも、同様とするものとする。

第八 失踪の宣告による婚姻の解消(第七百二十八条、第七百五十一条、第七百七十一条の二関係)

一 夫婦の一方が失踪の宣告を受けた後他の一方が再婚をしたときは、再婚後にされた失踪の宣告の取消しは、失踪の宣告による前婚の解消の効力に影響を及ぼさないものとする。

二 一の場合には、前婚による姻族関係は、失踪の宣告の取消しによって終了するものとする。ただし、失踪の宣告後その取消し前にされた第七百二十八条第二項の意思表示の効力を妨げないものとする。

三 第七百五十一条の規定は、一の場合にも、適用するものとする。

四 第六の一及び二は一の場合について、第七百六十九条の規定は二本文の場合について準用するものとする。

第九 失踪の宣告の取消しと親権(第八百十九条関係)

一 父母の婚姻中にその一方が失踪の宣告を受けた後他の一方が再婚をした場合において、再婚後に失踪の宣告が取り消されたときは、親権は、再婚をした父又は母がこれを行うものとする。

二 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができるものとする。

第十 相続の効力(第九百条関係)

 嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同一とするものとする。

第十一 施行期日等(附則関係)

一 施行期日

 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行するものとする。

二 経過措置の原則

 改正後の民法の規定は、別段の定めがある場合を除き、改正法の施行前に生じた事項にも適用するものとする。ただし、改正前の民法の規定によって生じた効力を妨げないものとする。

三 失踪の宣告の取消しに関する経過措置

 第八及び第九は、改正法の施行前に失踪の宣告が取り消された場合には、適用しないものとする。

四 婚姻適齢に関する経過措置

 改正法の施行の際十六歳に達している女は、第一の一にかかわらず、婚姻をすることができるものとする。

五 夫婦の氏に関する経過措置

1 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との協議で、改正法の施行の日から二年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができるものとする。

2 1により夫又は妻が婚姻前の氏に復することとなったときは、改正後の民法の規定の適用については、婚姻の際夫婦が称する氏として定めた夫又は妻の氏を第三の二により子が称する氏として定めた氏とみなすものとする。

六 相続の効力に関する経過措置

 改正法の施行前に開始した相続に関しては、なお、改正前の民法の規定を適用するものとする。