参議院法制局

第140回国会


少子社会における子育て支援に関する基本法(案)

目次

第一章 総則(第一条―第六条)

第二章 子育て支援計画(第七条・第八条)

第三章 基本的施策(第九条―第十五条)

第四章 子育て支援会議(第十六条・第十七条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、少子化の進展が国民生活に広範な影響を及ぼすものであることにかんがみ、子どもの養育を行う者に対する支援(以下「子育て支援」という。)のための施策に関しその基本となる事項を定めることにより、子育て支援のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって子どもの健やかな発達と社会経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(施策の基本方針)

第二条 子育て支援のための施策は、子どもの養育を行う者が安心して子どもを生み育てることができる環境を整備することを基本とするとともに、有機的な連携の下に総合的かつ計画的に、策定され、及び実施されなければならない。

2 子育て支援のための施策の策定及び実施に当たっては、子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮しなければならない。

(国の責務)

第三条 国は、子育て支援のための総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、子育て支援に関し、国と協力しつつ、当該地域の社会的及び経済的な状況に応じた施策を策定し、並びにこれを実施する責務を有する。

(法制上の措置等)

第五条 政府は、子育て支援のための施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。

(年次報告)

第六条 政府は、毎年、国会に、政府が子育て支援のために講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。

第二章 子育て支援計画

(子育て支援基本計画)

第七条 政府は、子育て支援のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、子育て支援のための施策に関する基本的な計画(以下「子育て支援基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 政府は、前項の規定により子育て支援基本計画を策定し、又はこれを変更したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならない。

(都道府県子育て支援計画等)

第八条 都道府県は、子育て支援基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における社会的及び経済的な状況を踏まえ、当該都道府県における子育て支援のための施策に関する基本的な計画(次項及び第三項において「都道府県子育て支援計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

2 市町村は、子育て支援基本計画(都道府県子育て支援計画が策定されているときは、子育て支援基本計画及び都道府県子育て支援計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第五項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における社会的及び経済的な状況を踏まえ、当該市町村における子育て支援のための施策に関する基本的な計画(次項において「市町村子育て支援計画」という。)を策定するよう努めなければならない。

3 都道府県又は市町村は、都道府県子育て支援計画若しくは市町村子育て支援計画を策定し、又はこれを変更したときは、その要旨を公表しなければならない。

第三章 基本的施策

(雇用環境の整備)

第九条 国及び地方公共団体は、育児休業に関する制度の充実、労働時間の短縮の促進その他子どもの養育を行う者の職業生活と家庭生活との両立を可能とする雇用環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

(子育て支援に関するサービスの提供体制の整備)

第十条 国及び地方公共団体は、子育て支援に関する子どもの養育を行う者の多様な需要に適確に対応することができるよう保育サービスの拡充、短期間入所による養育支援のサービスの充実その他地域における子育て支援に係る体制の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、子育て支援に必要な人材の養成及び確保を促進するとともに、民間事業者が提供する子育て支援に関するサービスの健全な育成及び活用を図るよう必要な施策を講ずるものとする。

(母子保健医療体制の整備)

第十一条 国及び地方公共団体は、妊産婦及び乳幼児の心身の特性に応じた適切な医療の確保その他母子保健医療体制の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

(生活環境の整備)

第十二条 国及び地方公共団体は、子どもの養育及び成長に適した家族向け住宅が確保されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、子どもの遊びの場及び子どもの健康の増進又は情操の 養に資する施設の整備、多様な生活文化に関する体験を可能とする機会の拡大等を通じて子どもの健全な発達に資する環境の整備を図るとともに、子どもが安全に生活することができる環境を確保するよう必要な施策を講ずるものとする。

(ゆとりのある学校教育の推進)

第十三条 国及び地方公共団体は、子どもの多様な個性に応じたゆとりのある学校教育の実現のため、教育の内容及び方法の改善及び充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

(経済的負担の軽減)

第十四条 国及び地方公共団体は、子どもの養育を行う者の経済的負担の軽減を図るため、税制上の措置、児童手当制度の改善及び充実、奨学事業の拡充その他の必要な施策を講ずるものとする。

(国民の理解と協力)

第十五条 国及び地方公共団体は、子育て支援について国民の理解と協力が得られるよう必要な施策を講ずるものとする。

第四章 子育て支援会議

(中央子育て支援会議)

第十六条 総理府に、特別の機関として、中央子育て支援会議(以下「中央会議」という。)を置く。

2 中央会議は、次の事務をつかさどる。

一 子育て支援基本計画の案を作成すること。

二 子育て支援のための施策について必要な関係行政機関相互の調整を行うこと。

三 前二号に掲げるもののほか、子育て支援のための総合的な施策に関する重要事項について審議し、及びその実施を推進すること。

3 中央会議は、会長及び委員をもって組織する。

4 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。

5 委員は、関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する。

6 中央会議に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

7 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

8 中央会議の庶務は、総務庁において処理する。

9 前各項に定めるもののほか、中央会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

(地方子育て支援会議)

第十七条 都道府県(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(第四項において「指定都市」という。)を含む。次項及び第三項において同じ。)に、地方子育て支援会議を置く。

2 都道府県に置かれる地方子育て支援会議は、次の事務をつかさどる。

一 当該都道府県における子育て支援のための総合的な施策について審議し、及びその実施を計画的に推進すること。

二 当該都道府県における子育て支援のための施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を行うこと。

3 都道府県に置かれる地方子育て支援会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、条例で定める。

4 市町村(指定都市を除く。)は、当該市町村における子育て支援のための総合的な施策について審議し、及びその実施を計画的に推進し、並びに子育て支援のための施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を行うため、条例で定めるところにより、地方子育て支援会議を置くことができる。

附 則

(施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(地方自治法の一部改正)

2 地方自治法の一部を次のように改正する。

 別表第七第一号の表中

都道府県交通安全対策会議

交通安全対策基本法第十六条第二項の規定による都道府県交通安全計画の作成及びその実施の推進、都道府県及び関係指定地方行政機関等相互間の連絡調整等に関する事務

都道府県交通安全対策会議

交通安全対策基本法第十六条第二項の規定による都道府県交通安全計画の作成及びその実施の推進、都道府県及び関係指定地方行政機関等相互間の連絡調整等に関する事務

地方子育て支援会議

少子社会における子育て支援に関する基本法(平成九年法律第   号)第十七条第二項の規定による子育て支援のための総合的な施策の審議及びその実施の計画的な推進並びに子育て支援のための施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整に関する事務

に改め、別表第七第二号の表中

土地利用審査会

国土利用計画法第三十九条第二項の規定による土地売買等の契約の締結の中止等の勧告についての市長に対する意見の陳述に関する事務

土地利用審査会

国土利用計画法第三十九条第二項の規定による土地売買等の契約の締結の中止等の勧告についての市長に対する意見の陳述に関する事務

地方子育て支援会議

少子社会における子育て支援に関する基本法第十七条第二項の規定による子育て支援のための総合的な施策の審議及びその実施の計画的な推進並びに子育て支援のための施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整に関する事務

に改める。

(総理府設置法の一部改正)

3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

 第十四条の二の次に次の一条を加える。

(中央子育て支援会議)

第十四条の三 本府に、中央子育て支援会議を置く。

2 中央子育て支援会議の組織及び所掌事務については、少子社会における子育て支援に関する基本法(平成九年法律第   号)の定めるところによる。

(総務庁設置法の一部改正)

4 総務庁設置法(昭和五十八年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。

 第四条第四十三号の次に次の三号を加える。

四十三の二 各行政機関の子どもの養育を行う者に対する支援のための施策及び事務の総合調整を行うこと。

四十三の三 各行政機関の子どもの養育を行う者に対する支援のための事務の連絡に関する事務を行うこと。

四十三の四 子どもの養育を行う者に対する支援のための事務のうち他の行政機関の所掌に属しないものを調査し、企画し、及び立案すること。

 

理 由

 少子化の進展が国民生活に広範な影響を及ぼすものであることにかんがみ、子育て支援のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、子育て支援のための施策に関しその基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。