法制執務コラム

他法改正とコンピュータ

α:最近、AIの進化が仕事に与える影響が話題ですね。法律案の立案に関しても、コンピュータをどのように使いこなすかは、関心事の一つですよね。

β:以前、「立法例について」〔『立法と調査』第346 号〕のコラムで、"データベースは便利である一方、使うときの注意も必要"といった観点が書かれていたね。

α:ほかには、いわゆる"他法改正のチェック作業"(※)でもデータベースを活用しますね。〔※ 法律を制定改廃する際、附則で付随的に改正すべき他の法律をチェックする作業〕

β:そうだね。例えば、ある法律...仮にX法としよう、これを改正するときの他法改正については、その法律の題名である「X法」をデータベースで検索すれば、X法の規定を引用している他法が一覧できて、チェックにいかすことができる。それは有り難いね。だから、この作業は、大した手間ではないと思われがちだけど...実はそうでもない。

α:X法の規定を引用していても、改正が不要な場合がありますからね。条の移動等に伴う形式的な改正以外は、X法の改正のねらい・内容を頭に置いて、それとの調整が必要かどうかを一つ一つ"判断"していくことになる...その点では頭を使います。

β:一人前らしいことを言うじゃないか(笑)。データベースの検索手法としては、法律の題名の検索のほかに、実現しようとしている法政策に関わる"キーワード"を設定して、それを検索するという手もあるね。より関係のない他法が多くヒットするから、αさんの言う"判断"の必要性は高まるけど、チェック漏れを防止するには、有用な手だ。でも、データベースの活用も完璧じゃない。「X法」や"キーワード"を検索するだけでは見落としやすい改正対象があるってことも、分かっているよね。

α:えっ?!

β:おやおや、そこで驚かれては困るのだよ。例えば、「住民基本台帳法」だ。X法に給付金の支給制度を新設するとするね。その支給事務について、住基ネットを利用した情報提供が必要であれば、住基法の改正が問題になる(住基法の別表)。でも、改正前のX法に住基制度に関連する事項が定められていなければ、住基法には「X法」が引用されていないから、「X法」で検索しても見つからない。また、キーワードでヒットする可能性も低い。さらに...その支給主体が自治体で、その財源を国が負担する場合には、「地方財政法」の改正も検討することになる。これも見つけにくい法律の一つだね。こういう類いの法律は、ほかにも色々あるから、気になる制度を見かけたら自分の中にため込んでおいて、"今回の立案に関係ないかな?"と考えを巡らせる必要があるね。

α:そこまで全部やってくれるAIって開発できますかね。

β:すぐ楽をしようと考えないの。色々な制度を幅広く知っておくことは、中心となる法政策を練る上でも、大事なんだから。

 (高澤和也/「立法と調査」NO.390・2017年7月)


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