法制執務コラム

中小企業の範囲

 100年に1度ともいわれる経済情勢の下、我が国の経済の基盤を形成している中小企業に関する施策が注目を集めていますが、中小企業とはいったいどのような企業をいうのでしょうか。

 中小企業に関する施策の基本を定める中小企業基本法では、中小企業者のおおむねの範囲を業種ごとに資本金の額等や従業員の数を基準にして定めています(同法第2条第1項)。具体的には、①製造業その他の業種(②~④を除く。)については資本金の額等が3億円以下か従業員の数が300人以下、②卸売業については資本金の額等が1億円以下か従業員の数が100人以下、③サービス業については資本金の額等が5千万円以下か従業員の数が100人以下、④小売業については資本金の額等が5千万円以下か従業員の数が50人以下の会社や個人としています。

 ところが、これに当てはまるのが中小企業者であると言い切れるかというと、必ずしもそうではありません。中小企業基本法はあくまでおおむねの範囲を示したにすぎず、それぞれの施策における具体的な範囲は、施策ごとに定めることとされているからです。実際、それぞれの法律における中小企業者の定義規定を見ていくと、中小企業基本法の範囲を基本としつつ独自に対象を追加しているものが数多く見受けられます。例えば、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律では、ゴム製品製造業や旅館業など政令で定める業種について資本金の額や従業員の数を別に定めているほか、会社や個人に限らず協業組合等の組合も中小企業者に含めています(同法第2条第1項・同法施行令第1条)。

 さらに、中小企業基本法とは全く異なる観点から中小企業者の定義をしているものもあります。例えば、租税特別措置法施行令における法人税法の特例に関する規定では、中小企業者を資本金の額が1億円以下の法人などと定義しています(同令第27条の4第10項)。税制には税制独自の視点があるということでしょうか。

 このように、用語の定義は法令ごとにされますので、ある法令で定義されている用語であっても、別の法令では別の定義がなされるということがあります。同じ用語であれば同じ意味を持つという方が利用する人にとっては分かりやすいかもしれませんが、法令の趣旨・目的によって対象とすべき範囲が異なる場合がある以上、同じ用語でも法令によって異なる定義をする場合があるのはやむを得ないといえるでしょう。

 結局のところ、経営者が自分の会社が中小企業に当たるのかどうかを判断するには、一つ一つの法令ごとに確認するほかないようです。中小企業であることによって支援を受けられる場合も多いので、見逃しのないようにしたいものです。

(桑原明/「立法と調査」NO.295・2009年8月)


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