法制執務コラム

六法に書かれていない重要事項?

 今国会において、行政運営の公正の確保及び透明性の向上を図るため、政省令等の制定手続に関し共通する事項として、意見を公募する手続に係る規定の整備を行うこと等を内容とする行政手続法の一部を改正する法律案が提出されています(平成17年3月末現在)。

 ここで、現在国の行政機関で行われているパブリック・コメントとの関係が気になる方もいらっしゃるかもしれません。これについては、平成11年3月23日の閣議決定において「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」が定められており、現在行われているパブリック・コメントは、この閣議決定にのっとり統一的に行われています。

 閣議決定とは、内閣総理大臣及びその他の国務大臣をもって組織する合議体たる内閣の会議(閣議)で内閣の権限事項を決定することであり、憲法又は法律が内閣の意思決定を当然必要としている事項、例えば、法律案及び政令の決定は例外なく閣議決定の方式によることになります。また、特に法令上の根拠がなくても、重要な政策に関する事項は閣議決定で決められることが多くなっています。

 冒頭で紹介した改正法案は、平成11年の閣議決定を、その施策の重要性にかんがみ法律に「格上げ」する側面があるといえようかと思います。閣議決定事項が法律に「格上げ」になったものとしては、ほかに環境アセスメントの例を挙げることができます。環境影響評価法案については、昭和56年に一度法案が提出されたのですが、各方面における調整が付かず、昭和58年に廃案となりました。政府では、これを受けて、昭和59年に「環境影響評価の実施について」という要綱を閣議決定し、その閣議決定に基づく環境アセスメント(閣議アセス)を実施してきました。この閣議アセスをベースに審議会等で検討が重ねられた結果、平成9年に、閣議アセスを更に進めた内容の新たな環境影響評価法案が国会に提出され、同年成立しました。

 このように閣議決定で行われていた施策を法制化することのメリットは、個々の法律によって様々でしょうが、ある程度一般的にいえることとしては、従来は内閣自身による意思決定において国民一般に対してそれに基づく行政指導で行われていた施策が、国会で議決された法律となることによって、その施策を実施すべきことが内閣の責務とされるとともに国民一般に対してもその施策を一定の強制力をもって行うことができることになり、その結果、その施策がより強力に実施されるようになるということがあると思われます。また、こうした効果があることの裏返しでもありますが、それが官報で公布されて広く国民に周知されるようになるということもメリットといえるかと思われます。

 その点、閣議決定の内容は、官報にも六法全書の類にも掲載されることがないわけですから、内閣の重要な意思決定であるのに、調べたいと思ってもお目当ての閣議決定を探し出すのさえ一苦労ということもしばしばです。閣議決定事項が、国民一般にとってもっと簡単にアクセスできるものになればいいのに、と思ってしまいます。

(藤田弓子/「立法と調査」NO.248・2005年5月)


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