法制執務コラム

変更適用-改正労働者派遣法を例に-

 去る3月1日、改正労働者派遣法(正確には「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律(平成15年法律第82号)」)が施行されました。今回の法改正では、従来派遣を禁止されてきた、物の製造業務(特定製造業務)についての派遣が解禁されましたが、施行後3年間は、派遣期間の上限を他の業務の3年に対し1年としています。これを条文上簡潔に表現する立法技術として変更適用(適用読替)という手法が用いられています。

 変更適用は、ある条文が適用されることを前提に、これがそのまま適用されると政策的配慮その他の配慮から不都合が生じるような場合に、その条文中の字句を他の字句に置き換える必要があるときに用いられる手法です。

 改正労働者派遣法第40条の2第2項は、派遣期間の上限(派遣可能期間)を次のように定めています。なお、第1号の「その定められている期間」は、同条第3項により、派遣先が3年以内の期間を定めることとされています。 

2 前項の派遣可能期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間とする。

 一 次項の規定により労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間が定められている場合 その定められている期間

 二 前号に掲げる場合以外の場合 1年

 この規定が、以下のような附則第5項の規定によって、変更適用することとされています(【】内は筆者が便宜要約したもの)。

5 【改正労働者派遣法の施行日】から起算して3年を経過する日までの間における第4十条の2第2項の規定の適用については、同項中「次の」とあるのは、「特定製造業務については1年とし、特定製造業務以外の業務については次の」とする。

 要は、平成19年2月までの間は、第40条の2第2項をそのまま読むのではなく、置換え(読替え)をしてくださいというわけです。そこで、読替えをしてみますと、読替え後の第40条の2第2項は次のようになります。

2 前項の派遣可能期間は、特定製造業務については1年とし、特定製造業務以外の業務については次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間とする。

 一・二 略

 これによって、派遣期間の上限は、施行後3年間は1年となり、施行後3年経過後は、附則第5項の規定が働かなくなるため、3年となるわけです。

 変更適用の手法を用いないと、施行後3年間と施行後3年経過後とを分けて規定を置かなければならず、これは大変な分量になります。しかし変更適用の手法を用いると、条文が附則第5項のわずか数行で足りるわけです。このように変更適用の手法は、法律全体をコンパクトにするためによく用いられますが、他方、多用しすぎると、条文を読む者にとって複雑で分かりにくい条文となりかねません。

 時代の進展に伴い、法律の内容も高度化・専門化しています。そのような中で、条文の起案に携わる者としては、できる限り簡潔で、分かりやすい条文づくりに努めたいものです。

(小沼敦/「立法と調査」NO.241・2004年5月)


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