法制執務コラム

「改め文」―法令の一部改正方式―

 国民にとって法令を親しみ易いものとするためには、文体、用字、用語等のほか、「改め文(カイメブンと読まれることも多い。)」と呼ばれる一部改正方式も改善する必要があるとの指摘が、以前からありました。最近、「改め文」については、電子政府の実現を背景とした事務の簡素・合理化という観点からも議論が出ています。

 「改め文」という俗称は、一部改正法令が、『第○条中「△△△」を「×××」に改める。』というように規定されることから生まれたのでしょうが、一部改正は、「改める」だけではなく、「削る」、「加える」ことによっても行われます。

 「改め文」による一部改正方式は、「溶け込み方式」とも呼ばれ、一部改正法の規定が元の法律の規定に溶け込むことによって初めて新しい規範としての意味を持つことになるので、元の法律と対照して読まない限り改正の内容を正確に理解することはできません。

 第156回国会で成立した雇用保険法等一部改正法(平成15年法律第31号)は、次の改正規定から始まっています。

『 第十条第四項第一号を次のように改める。

一 就業促進手当

第十条第四項中第二号を削り、第三号を第二号とし、第四号を第三号とする。』 

この部分は、就職促進給付のうちの再就職手当及び常用就職支度金を廃止して就業促進手当を新設するためのものですが、改正規定を読んだだけで何がどう改正されたのかを理解できるのは雇用保険制度に精通したごく限られた人でしょう。

 また、改正はできるだけ必要な部分に限って簡潔にすべきとされているため、中には『「)及び」を「)、」に改め』というような一見意味不明な改正規定もあります。

 一部改正方式については、昨年12月の衆議院総務委員会において質疑があり、内閣法制局は、「改め文といわれる逐語的改正方式は、改正点が明確かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、我が国における法改正の方法として定着している。逐語的改正方式をやめて、現在参考資料とされている新旧対照表を改正法案の本体とすることについては、改め文よりも相当に大部となり、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すること、また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもある。」旨の答弁をしています。

 一部改正方式としては、アメリカ合衆国憲法のように「修正第○条」として制定する方式もありますが、これについては、新たな規定の内容は明白であるが、それ以前の規定と比較して現行規範が何かを捉える必要があるという問題を解決しなければならないとする意見があります。日本においても、旧皇室典範の改正は皇室典範増補の制定によって行われており、アメリカ合衆国憲法と同種の改正方式が採られたことがありました。しかし、この方式が他の法令に用いられなかったのは、皇室典範が特別な法令であったこと以外にも理由があるのかも知れません。

 分かり易さと正確さとの調和を追求するとともに、これに事務の簡素・合理化という新たな要素を加えたとき、どのような改正方式が適当なのか、今後の検討の結果が待たれるところです。

(内藤要/「立法と調査」NO.236・2003年7月)


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