法制執務コラム

「電子政府」をめぐる法律

 「IT革命」が叫ばれて久しくなりました。インターネットやパソコンは日々の生活に不可欠になったと言っても過言ではありません。先日は岡山県新見市で日本初の電子投票が行われるなど、情報技術の発展は私達と政治、行政との関係にも影響を与えています。「e-Government(電子政府)」、「e-Japan戦略」といった言葉もよく聞かれますが、これらはどのような法律に基づいて行われているのでしょうか。また、電子政府とは一体どのようなものなのでしょうか。

 我が国では、2001年1月に施行された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」の下、全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現を目指して(同法第3条)、情報インフラの整備や情報教育など様々な取り組みが行われています。また、同法の施行と同じ頃発表された日本のIT化の国家戦略である「e-Japan戦略」では、電子政府の実現や電子商取引ルールの整備が重点的な課題とされています。

 電子政府とは、行政の業務をオンライン化し、情報を共有・活用することで、行政の簡素化・効率化を図り、国民や事業者の負担を軽減しようとするもの(「e-Japan戦略」より)です。これが実現すると、自宅や公共施設のパソコンからオンラインで各種の申請ができたり、行政が保有する情報をインターネット経由で簡単・迅速に入手することができるようになるといわれています。ただし、そのためには、情報セキュリティー対策など、既存の法律では対応しきれない問題に対処しなければならず、これらについて順次必要な法律の整備が行われています。

 例えば、インターネット上で国民と行政機関が電子文書をやりとりするためには、その文書について、本人が作ったものであること、内容が改ざんされていないことが確認されなくてはいけません。これについては、2001年4月に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」で、電子文書等に記録された情報について本人による一定の電子署名がなされているときは真正に成立したものであると推定されることになりました。

 また、行政に対する申請、届出等の手続については、第154回国会に提出された「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案」の中で、書面で行う行政手続は原則として全てコンピューターシステムを利用して行うことができること、この方法で行われた行政手続も書面により行われたものとみなすこと等が規定されています。

 このほか、1999年の住民基本台帳法改正で、住民コードを用いた住民情報の全国的ネットワークの整備が定められたことなども電子政府実現を側面から支える法整備の一つといえますが、審議の段階では個人情報の保護をめぐって激しい議論となり、法案の修正が行われています。当時の総理大臣も、住民基本台帳ネットワークシステムの実施は民間部門も対象とした個人情報保護に関する法整備が前提である旨の答弁をしており、第151回国会で「個人情報の保護に関する法律案」が提出されました。この法案についても、個人情報保護の在り方をめぐって議論が続いているのはご承知の通りです。

 電子政府の実現によって影響を受けるのは私達一人一人です。電子政府をめぐる法律の動向に今後も注目していきたいものです。

(高橋文佳/「立法と調査」NO.231・2002年9月)


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