法制執務コラム

限時法

 第153回国会において、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(以下「テロ対策特別措置法」という。)が成立しました。この法律は、その内容や成立の過程が話題となりましたが、その他にもいくつかの興味深い点があります。まず、題名は、112字もあり、日本の法律全体のなかでも相当に長い方であるといえます。

 また、このテロ対策特別措置法が限時法であることも特徴の一つであるといえるでしょう。限時法とは、一定の有効期間を付した法令のことをいい、「時限法」とか「時限立法」とよばれることもあります。最近の法律では、司法制度改革審議会設置法や地方分権推進法等があります。

 限時法のように見えて、実際は似て非なるものもあります。例えば、電気通信基盤充実臨時措置法(平成3年法律第27号)は、附則第2条で「この法律は、平成十八年五月三十一日までに廃止するものとする。」と規定していますが、これは平成18年5月31日になったら当然に廃止になるという意味ではなく、それまでにこの法律を廃止する立法をすべきであるという立法者の意思の表明にすぎないものと考えられています。ですから、平成18年5月31日までに何らの立法措置が取られない場合には、この法律はそのまま存続するというわけです。

 したがって、限時法を丁寧に定義すれば、法令の有効期間がその法令自体の中で明確に限定されており、その失効時期の到来とともに特別な立法措置を必要とせずにその効力が失われることになるもの、となるでしょう。ちなみに、この電気通信基盤充実臨時措置法の附則第2条は、元は「施行の日から十年以内に廃止するものとする」となっており、施行の日から10年というのは今年(平成13年)の5月31日でしたが、この法律は今年改正されて、6月8日から現在のような文言になりました。

 限時法が重要な意味を持つのは、「限時法の理論」の場合だと言われます。「限時法の理論」というのは、限時法は有効期間が決まっているので、限時法に罰則がある場合、その罰則も時限法の失効とともに効力を失います。すると、当該法律が失効する間際の行為は、実際上その罰則の有効期間中に処罰することができないため、結果的に罰則が少し早めに失効したのと同じことになってしまい問題だということで、失効前にした行為について、特別の規定がなくとも失効後にも処罰できるとする考えで、判例で認められています。もっとも、これは限時法の中でその旨の規定を置いておけば解決する問題であり、現在の限時法にはそのような規定が置かれていることが多いようです。

 実は、今回のテロ対策特別措置法には罰則はありません。そういう意味では、限時法であることによって生じる問題はあまりないと言ってもいいかもしれません。しかも、この法律には、別に法律で定める必要があるものの、必要があればその効力を延長することができる旨の規定があります。さらに、再延長のための規定もあります。とても用意がいい法律であると言えるでしょう。

(鈴木達也/「立法と調査」NO.227・2002年1月)


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