法制執務コラム

「廃止制定」と「全部改正」

 本年1月から、中央省庁が1府12省庁体制に再編されました。再編後の10省のうち、法務省、外務省、農林水産省は、従前の名称をそのまま引き継いでいますが、従前の法務省等3省のそれぞれの設置法は、中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平11法102)第4条の規定によって廃止され、改めて同じ題名の設置法が制定されています。

 このように、ある法律の内容を全面的に改めようとする場合に、既存の法律を廃止すると同時に、これに代わる新しい法律を制定する方式がとられることがあります。この方式を「廃止制定」方式といいます。

 廃止制定方式による場合であっても、今回の法務省設置法(平11法93)などのように、既存の法律の題名とこれに代わる新しい法律の題名とが同じであることは必ずしも珍しいことではありません。廃止された法律とこれに代わる新規制定法律の題名とが同じものとしては、国籍法(昭25法147)、薬事法(昭35法145)、国有財産法(昭23法73)などがあります。

 もう一つ、法律の内容の全面的改定を行う場合の方式としては、「全部改正」という方式があります。この方式は、形式的には既存の法律を存続させつつ、法律の中身全部を書き改めるものです。この場合の法律の中身には題名も含まれ、形式的には既存の法律を存続させるという趣旨からすれば一定の限界はあるものの、必要に応じて全部改正前の題名と異なる題名とすることは差支えないとされています。全部改正前の題名と改正後の題名とが異なるものとしては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭45法137。清掃法の全部改正)、通関業法(昭42法122。税関貨物取扱人法の全部改正)などがあります。

 さて、廃止制定方式と全部改正方式のいずれの方式をとるべきかについては、既存の制度と新しい制度とが質的に変更され、継続性が弱い場合には廃止制定方式がとられることが多く、一方、既存の制度の基本を維持しつつ、その内容を全面的に改めようとする場合には全部改正方式がとられることが多い、と説明されています。例えば、国籍法は、旧国籍法(明32法66)の内容が新憲法及び改正民法の趣旨に沿わないことからこれを廃止して新たに制定されたもので、廃止制定方式の典型例といえるでしょう。また、今回の中央省庁再編は、戦後50年続いた行政システムを廃し、新たに21世紀型のそれを構築するという理念の下に行われたものであることなどから、各省設置法については廃止制定方式によったものと思われます(防衛庁設置法は、一部改正)。一方、所得税法(昭40法33)等の税法関係では全部改正方式をとるものを多く見かけますが、これは、税を徴収するという制度の基本は継続し、具体的内容を全面的に改めたということなのでしょう。ただ、継続性・連続性といってもいろいろな観点から考えられるものであって、どちらの方式によるべきとの明確な基準はないというのが結論のようです。

 なお、全部改正後の法律は、新規制定法律と同様に、いきなり題名から始まり、法律番号も新しいものが付されるため、外観上区別しにくいことから、全部改正方式の場合には、題名の次に「○○法の全部を改正する」という制定文を付すこととされています。

(内藤要/「立法と調査」NO.225・2001年9月)


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