法制執務コラム

「禁止する措置を講ずるものとする」という規定の意味

 平成6年の政治資金規正法の一部を改正する法律(以下「平成6年改正法」という。)附則第9条は、「会社、労働組合その他の団体の資金管理団体に対してする寄附については、この法律の施行(平成7年1月1日)後5年を経過した場合において、これを禁止する措置を講ずるものとする。」(括弧は筆者注)と定めています。

 この規定を受けて、いわゆる政治家個人に対する企業団体献金の取扱いが、平成11年中に解決が必要な政治課題のひとつとなりました。

 ところで、この規定を一見すると、政治家個人に対する企業団体献金は、政治課題とするまでもなく、平成6年改正法施行後5年を経過した時点で、当然に禁止になると読めるかもしれません。

 しかし、附則第9条の解釈としては、そういうことにはなりません。平成6年改正法施行後5年を経過したからといって、会社、労働組合その他の団体が資金管理団体に対して寄附をすることを認めている政治資金規正法上の規定が、効力を失ったり、削除されたりするわけではなく、依然存在し、効力を持ち続けます。したがって、政治家個人に対する企業団体献金を禁止するには、政治資金規正法を改正する必要があります。

 では、平成6年改正法附則第9条は、どんな意味を持っているのでしょうか。思うに、同規定は、「平成6年改正法施行後5年を経過した場合に、政治資金規正法を改正して、政治家個人に対する企業団体献金を禁止することにします」という、平成6年改正法制定時の立法者の意思・方針を示しているということになるのでしょう。

 過去、国会で、法律の附則に「この法律は、○年○月○日までに廃止するものとする。」との規定が置かれた法律について、当該期日が経過した場合の当該法律の効力が問題とされたことがあり、当時の内閣法制局長官は「(略)この規定は、その定められた期限内にこの法律を廃止することについての立法者の意図、方針を明らかにしたものでございまして、この法律を廃止するためには、別途の立法措置を講ずることが必要であるわけであります。(以下略)」と答弁しています。

 平成6年改正法附則第9条がこのような意味を持つものとした場合、制定時の立法者の意思を尊重し、これによって決められた方針に従い、禁止のための法改正を行うのが筋だという意見があるでしょう。一方、禁止のための法改正を行うというのは、当時の立法者の意思・方針なのであって、実際に法改正を行うかどうかはその時点での立法者の意思によって決められるべきであるということも言えるわけです。立法者の意思が、時間的経過及びその間の立法事実の変化に伴って変化することはやむを得ないことですし、むしろ、当然のことです(だからこそ、法律の制定改廃が行われるのですから)。

 つまり、平成6年改正法附則第9条を受けての政治家個人に対する企業団体献金の取扱い問題は、現時点における立法者意思の確定の問題なのであって、結局は、立法府自身が結論を出さなければならない問題だということになります。

 なお、国民年金法等の一部を改正する法律案(145回国会閣法118号)附則第2条(政府原案)は、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成16年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の2分の1への引上げを図るものとする。」としています。年金改正法が成立すると、この附則第2条についても、将来、平成6年改正法附則第9条と同じようなことが起こってくるということを、記憶にとどめておきたいと思います。

(山岸健一/「立法と調査」NO.215・2000年1月)


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