法制執務コラム

見落とせない附則

 消費税率の見直しの期限が今年の9月30日とされていたため、その行方が注目を集めました。見直しの結果についてはいろいろと議論のあるところですが、ところで、このような見直し規定は、法律のどの部分に定められているのでしょうか。

 実は、このような規定は、法律の後ろの方の「附則」という部分に定められています。法律の規定は「本則」と「附則」から構成され、本則には、法令の本体的部分となる実質的な定めが置かれるのに対して、附則には、本則に定められた事項に付随して必要となる事項が定められることとなっています。

 先程の消費税率の見直し規定の場合は、前回の消費税法の改正に伴って置かれることとなった規定であり、厳密には、「所得税法及び消費税法の一部を改正する法律」という一部改正法の附則に規定されています。このような一部改正法の附則は、本来、元の法律の附則とは別のものですが、法令集では、編集の都合上、大体、元の法律の後に掲載されるのが例となっているようです。

 附則に規定される事項は法律の内容によって異なりますが、まず最初に置かれるのが施行期日に関する定めです。施行とは、その法律が実際に効力を発揮することを言い、施行期日は、法律の効力発生時期を明確にするために定められるものです。先程の消費税率の引上げの場合は、施行期日は平成9年4月1日とされていますが、消費税率の引上げについては凍結といった声もあり、施行期日をめぐっては、延期などまだ議論のあるところかもしれません。

 また、法律の改正が行われると、新制度への移行を円滑に行うための経過的な措置や、新旧法令の適用関係を明確にするための定め等が必要となりますが、これらの事項も附則における重要な規定事項です。

 例えば、罰則の規定が改正されれば、改正前の行為に対する罰則の適用をどうするかについての規定が必要となってきますし、税率が変われば、いつの時点の取引から新税率を適用すべきかなどについて定めを置くことが必要となってきます。消費税率の引上げに関連して、新聞や雑誌などで、「マイホームの建築をするなら今年の9月30日までに契約を」といった記事をよく見かけましたが、これは、来年4月から税率が引き上げられたとしても、今年の9月30日までに工事契約をすれば、引渡しが来年4月以降であっても3%の税率が適用されるとする経過措置があったためです。

 さらに、附則には、本則の暫定措置が定められている場合もあります。例えば、平成6年の改正前の衆議院議員の定数は511人でしたが、これは、公職選挙法の附則の規定により、当分の間、511人とするとされていたことによるものです。ちなみに、当時、本則で定められていた議員定数は471人でした。

 このように見てくると、附則には、経過措置など当事者にとって重大な影響を及ぼす事項が規定されていたり、暫定措置など本則だけを見ていたのでは分からないような事項が規定されていたりします。複雑な規定も多く、また、付随的事項ということで見過ごしてしまいそうですが、いずれも、本則の円滑な運用のためには不可欠な規定であり、見落としてはならない法律の重要な構成部分と言えましょう。

(植木祐子/「立法と調査」NO.196・1996年11月)


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