法制執務コラム

都市型災害に対する法の間隙―全壊分譲マンションの再建―

 1月17日、帰省中の信州で地震のニュースを耳にした私は、「関西で地震なんて珍しいな」ぐらいの感想で(むしろ、帰りの特急白山が北陸の大雪で1時間余り遅れたことの方がよっぽど大事件で)、まさかあれほどの大惨事になるとは...。改めて5,500名に上る犠牲者のご冥福を祈るとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

 国会職員という仕事がら、今次の大震災を機に制定された各種特別法の成立を身近に見てきたわけですが、そこで強く感じたことは、都市型災害に対するの法の間隙ということでした。その顕著な例の一つは、全壊した分譲マンションの再建の問題です。

 分譲マンションの権利関係やその修繕(復旧)・建替えについては、いわゆる区分所有権法が定めているのですが、どうも、この区分所有権法は、分譲マンションが倒壊によって全滅した場合には適用がないようです。つまり、分譲マンションの購入者は、その分譲マンションについて、自己の専有部分の所有権(区分所有権)と階段やエレベーターといった共用部分の共有持分とを取得するのですが、こうした権利の対象である分譲マンションそのものが全滅してしまった場合には、権利も一緒に消滅してしまい、もはや区分所有権法の律するところではなくなるというわけです。この場合は、「民法原則に戻る」と説明され、その分譲マンションが建っていた敷地をどうするかは敷地について権利を有する者の問題に帰着することになり、分譲マンションを再建するとなると、その全員の同意がなければなりません。

 ちなみに、かなり大規模なものでも、分譲マンションの一部滅失であれば、専有部分がなくなった者も含め、依然区分所有権が認められ、区分所有権法の定めるところに従い、区分所有者間で「復旧の決議(区分所有者及び専有部分の床面積の割合に応じた議決権の各4分の3以上)」や「建替えの決議(同5分の4以上)」を行うことができます。

 全壊分譲マンションの再建という問題は、関東大震災のときにはほとんど問題となっていません。マンションそのものが戦後の高度成長の申し子的存在であることを考えれば当然のことで、区分所有権法が制定されたのは昭和37年のことです。その意味で、区分所有権法もマンションの全壊という事態を経験することなく制定されたものなのです。いわば、分譲マンションの全壊滅失という事態は区分所有権法の間隙だったというわけです。

 今回、こうした全壊マンションの再建の困難さに配慮して制定されたのが、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」です。これによると、分譲マンション全滅の場合には、敷地共有者等(当該マンションの敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であったときの、その権利を有する者をいい、実際上は従前の区分所有権者と一致することが多いようです)が、3年以内に、敷地共有持分等の価格の割合による議決権の5分の4以上の多数で分譲マンションを再建する旨の決議(再建の決議)をすることができ、この決議に基づきマンションの再建を実現することができることとされています。

 この法律は、今次の大震災に限らず、将来の災害についても適用される恒久法であり、これにより、都市型災害に対する法の間隙が埋められたことになります。

(山岸健一/「立法と調査」NO.187・1995年5月)


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